さて、前回は怒りが発生する仕組みについて詳しく勉強しました。もう一度
復習しておきます。前回、人が怒りを発生するまでには「出来事との遭遇」
「出来事の意味づけ」「怒りの発生」の3段階を踏むことを説明しました。
また、人は「〜すべき」、「〜すべきでない」という自分の理想、つまり
「べき」と自分の目の前で起こっている「現実」の間にギャップが生じることで「怒りの発生」につながるというお話をしました。
たとえば、「会社の後輩が待ち合わせ時間に遅れてきた」という第1段階の
「出来事との遭遇」、つまり自分の目の前で起こっている「現実」があった場合に、第2段階の「出来事の意味づけ」、つまり「人は待ち合わせの時間を守るべき」という自分の理想との間にギャップが生じることで、第3段階の「怒りの発生」につながります。この「出来事の意味づけ」、つまり「べき」を変えていくことで「怒りの発生」を防ぐことができるようになります。
それが「怒りやすい体質を改善する」ということなのです。
人の心のなかにある「こうあるべき」という価値観は、一人ひとり違います。
自分の「こうあるべき」、「こうあるべきではない」は何か考えてみましょう。たとえば、待ち合わせ時間についてのあなたの「べき」は1〜3のうちどれでしょう。
1.待ち合わせ時間の5分前までに来るべき
2.待ち合わせ時間ちょうどまでには来るべき
3.(連絡なく遅れるのは)5分後までに来るべき
「待ち合わせ時間は守るべき」という考え方は多くの人が同意すると思いま
すが、仮に10時の待ち合わせだったとして、5分前には約束の場所に到着
しておくべきなのか、あるいは10時ちょうどまでには来るべきなのか、あるいは5分くらいの遅刻は許すべきなのか、と「べき」には個人差があります。
実は、自分の「べき」と自分の目の前で起こっている「現実」にギャップが生じても、すべてが「怒りの発生」につながるわけではありません。たとえば、「1.待ち合わせ時間の5分前までに来るべき」という価値観を持っている人が9時55分に待ち合わせ場所に来たとして、「3.(連絡なく遅れるのは)5分後までに来るべき」という価値観を持っている人と待ち合わせをして、相手が待ち合わせ時間を守らずに、10時5分に来たとしたら「怒
りの発生」になるかもしれませんが、「2.待ち合わせ時間ちょうどまでには来るべき」という価値観を持っている人と待ち合わせをして、相手が待ち合わせちょうどの10時に来たとしたら、「怒りの発生」にはならないかもしれません。
「べき」には3つあります。(1)自分と同じ「べき」、(2)少し違うが
許容できる「べき」、(3)自分と違う許容できない「べき」です。(1)、
(2)の場合では怒りは発生しません。(3)の場合に怒りが発生するのです。そして、それぞれの「べき」には境界線があります。怒りやすい人、キレやすい人、瞬間湯沸かし器のような人は、(1)自分と違う「べき」の多くが(3)自分と違う許容できない「べき」となってしまい、「怒りの発生」が起きやすくなります。つまり、(2)少し違うが許容できる「べき」の面積が狭いのです。そこで、「怒りやすい体質を改善する」ためには(2)少し違うが許容できる「べき」の境界線を広げ、その面積を増やして行くことが必要です。つまり、許容可能な「べき」を増やすことで、怒りやすい体質を改善していくのです。
自分の理想と同じではない、ギャップのある「出来事との遭遇」があった場
合に、「少し自分の理想と違うけど許そう」と思うことができれば「怒りの発生」には結びつきません。「会社の後輩が待ち合わせ時間に遅れてきた」
という自分の目の前で起こっている「現実」があった場合に、「後輩も待ち合わせに遅刻することがある」、「遅刻は誰にでもある」というように、その出来事を少し違うが許容できる「べき」にとらえることで、うまく自分の怒りをコントロールできるようになるのです。
今回で「アンガーマネジメント」についてのコラムは終了です。少しはお役
にたったでしょうか。「自分はイライラしてストレスをためやすい」、「自分はついカッとなって、怒ってしまう」という方は自分なりの方法で怒りをうまくコントロールしていきましょう(終)。
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