女優で漫才師の故ミヤコ蝶々さんは大阪・箕面市の自宅の庭で野菜を育ててい た。そして、前夜どんなに遅く帰宅しても、朝は6時半には起きて、トマトやキュ ウリ、ナスに水をやっていた。「その時野菜にね、どうや、できたか、ちゅうて聞 くんです」。花が咲けば、ほめてやる。「立派な花や。よう咲いたなあ」。実がつ きはじめたら励ます。
「あんたら、どないや。よそに較べて、大きゅうなりようが 遅いんやないか。頑張らなあかんで」。いよいよもぐ時には、野菜と相談だ。「ご 苦労さんやったなあ。もう食べてもええやろか」。ほめてやれば、花はいっそうよ く咲く。励ますと、実はめきめき大きくなる。食べたい、といえば、野菜は喜びに ふるえてみせる。「ほんまでっせ。黙っとったらあきまへん」。
園芸研究家の江尻光一さんによると、江戸時代、植物には、「かけ肥をかけよ」と いったものだそうだ。人が話しかけてやるのが何よりの肥料、という意味だ。感情 のないはずの植物でも、それくらいの愛情を持ってやらないと、育つものも育たな いということだろう。
蝶々さんは、上の話を続けて「まして人間相手の時は、まめに声をかけることで す」と言っている。彼女は「蝶々新芸スクール」というタレント学校をやっていた が、「よっしゃ。ようなって来たよ」「もうひと息や。そこで気抜いたら、あかん で」と生徒達の演技を見て、一人ずつ声をかけることを忘れなかったそうで す。「そうしてやらんと、変に横の方へばっかし伸びて行く子が出て来るんで す。つくづく人間も野菜もおんなじや、と思いますなあ」。(終) スポーツや仕事でもいえますが「声をかける」ことは重要です。スポーツであれば 「ナイスプレイ!」「ナイスキャッチ!」と声をかけあい、お互いのモチベーショ ンを高めたりします。
仕事でも「君のお陰で助かった!」「頑張った甲斐があった ぞ!」「良くやった!」と部下達に声をかければモチベーションは高まるでしょ う。スポーツにしろ、仕事にしろ、こうやって声をかけあえるチームは必ず強くな ります。ぜひみなさんも「声をかける」大切さを今一度考えて、いろんな場面で声 をかけ合ってみましょう。 |