私たちが子どもの頃にはいろんな「遊び」がありました。年代によっても違うと思いますが、現在51歳の私が子どもの頃には、小学校の放課後にみんなで公園や神社に集まって、毎日暗くなるまで「だるまさんがころんだ」や「かかし」などで遊んでいました。今回は、自分が子どもの頃にどんな「遊び」をしていたかを思い出しながらお読みください。
子どもは遊びを通して成長・発達していきます。特に、コミュニケーション能力の発達には、勉強や塾やお稽古ごとよりも遊びが大切な要素となります。1〜2才頃までの子どもは周りにある物や人に反応して遊び、体を動かすなどの「一人遊び」をします。2〜3才頃になると、そばにいる友だちと交流はまだできませんが、互いに関心を持っているので、友だちを真似て同じ遊びをするという「並行遊び」がよくみられるようになります。子どもを初めて公園の砂場に連れて行くと、まずは一人で砂遊びをする「一人遊び」をしますが、そのうち他の子どもが砂で山をつくると、それを真似して山をつくるようになります。これが「並行遊び」です。
3才以降になると、おもちゃの貸し借りをしたり、話しかけたりなど、一緒に友だちと遊ぶ「連合遊び」ができるようになり、4〜5才になると、数人の友だちが集まって「集団遊び」をするようになります。砂場では、二人で一つの山をつくるという「連合遊び」ができるようになり、それが発展して何人もが集まって協力しながら大きな山をつくる「集団遊び」に移行していくのです。
そして、4〜5才以降から学童期にかけてのこの「集団遊び」が、大人になって必要とされるコミュニケーション能力を発達させるのに重要な役割を果たすのです。
しかし、最近の子どもたちは学童期になってもテレビゲームという遊びから抜けられず、いつまでたっても「並行遊び」から抜けられません。「集団遊び」 は途中でやめようと思っても、みんなに止められてなかなかやめられませんが、「並行遊び」は自分でスイッチを切るだけでやめられるので、他人に気をつかわなくても済みます。テレビゲームはスイッチを切っても、リセットをしても相手は文句を言いません。機械が相手だと、心遣いや思いやりをする必要がないのです。また、「集団遊び」を経験することで、役割分担をしたり、共通の目的やルールを共有することによってコミュニケーションで大切なことを学び、大人になる準備をしていくのですが、「並行遊び」が中心になると、それらの大切なことも学ぶことができません。
「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」・・・。これは有名なアメリカの牧師の言葉です。子どもたちにも、私たち大人にも必要なのは知識よりも知恵です。より高いレベルの学校に行って、より多くの知識を身につけて、より有名な企業に就職をすることを目的に子供に勉強をさせる教育も大切かもしれませんが、人生をより自分らしく、みんなと心からの喜びを分かち合う人生の知恵を「遊び」から学ばせることはもっと大切だと思います。ゆっくり時間の流れた昔とは違い、スピード化・情報化・効率化の進んだ社会で生活している大人も大変だと思いますが、「並行遊び」から子どもたちを脱出させるためには、大人は子どもがじっくりと知恵を育むことのできる環境を提供し、子どもの知恵に共感してあげることのできるような教育をしながら、子どもを温かく包んであげることが大切なのではないでしょうか。
子どもたちを「並行遊び」から脱出させ、たくさんの知恵を得ることができる「集団遊び」を私たち大人が子どもたちに継承することにより、現在の日本の社会全体がより良い社会に変わっていくような気がします。
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