安全JAWSちゃんのハートLetter
過去の記事
ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
闘争・逃走反応

1986年に第1作が発売されたコンピュータゲーム機用ソフト「ドラゴンク エスト」が第1作の発売から30周年を迎える今年の夏に「ドラゴンクエストライブスペクタクルツアー」という大規模アリーナショーとして、全国5都市で開催されることが発表されました。ファンとしては、まるでドラゴンクエストの世界に飛び込んだような体感ができるイベントとして開催を待ち望んでい る方も多いでしょう。

私が子供のころのコンピュータゲームはインベーダーゲームをはじめとした
「シューティングゲーム」が中心でしたが、ドラゴンクエストの発売をきっかけに「ロールプレイングゲーム(RPG)」という新しいジャンルに人気が集まりました。RPGはプレイヤーがゲームのキャラクターを操り、そのキャラクターの行動を選択することによりストーリーが展開していきます。敵と遭遇したときにその場ですぐに交戦するのではなく、まずは「たたかう」、「にげる」、「じゅもん(をとなえる)」、「どうぐ(をつかう)」などを選択し、その行動によりキャラクターの経験値を蓄積してパワーアップすることによって、目標を達成していくというゲームです。

実は、人間が自分に発生したストレスに対処する流れはこのRPGに似ています。たとえば、あなたが森の中を歩いていたときにクマに遭遇したら、あなたはどうするでしょうか。「クマに遭遇する」という日常生活では考えられない厳しい状況に置かれると、人間はストレスを感じます。そして、その情報が脳に伝えられ、「たたかう」か「にげる」を選択しようとする反応が起こります。 これを「闘争・逃走反応(とうそう・とうそうはんのう)」といいます。

クマに遭遇して闘争・逃走反応が起こると、その情報は脳から自律神経に伝えられ、すぐに動けるよう体が緊張して心臓の鼓動は早くなり、血圧が上がります。また、相手をよく見るために瞳孔は散大し、呼吸は激しくなります。そして、「たたかう」か「にげる」を選択します。「たたかう」を選択した場合、
クマに勝てばストレスは解消されます。「にげる」を選択した場合、クマから
逃れることができればストレスは解消されます。

ところが、日常生活の中・・・たとえば職場においては、「たたかう」か「にげる」を選択するのは現実的ではありません。上司から厳しいことを言われた
ときに上司を殴るわけにはいきませんし、その場から逃げたり、すぐに辞表を出して会社を辞めることは少ないでしょう。そこで、人間は「言葉」や「コミ
ュニケーション」の手段を使って、ストレスを軽減しようとするのです。たと
えば、上司に理解を求めて説明を加えたり、言い訳をしたり、謝ったりするこ
とで、または人間関係を普段からうまく調整しようという努力によって、「た
たかう」か「にげる」を選択せずに、上司との人間関係を保とうとするのです。

ただ、言葉やコミュニケーションをうまく使いこなせないと、上司に厳しいこ とを言われてもじっと我慢をしてストレスをためることになり、それが続くと
職場に来られなくなり、うつ病などのこころの病で休むことになってしまいま
す。そうならないように、コミュニケーションの力を身につけて、ストレスを 軽減することが大切です。つまり、RPGでいえば「たたかう」か「にげる」 かだけではなく、言葉という「じゅもん」を使ったり、コミュニケーションという「どうぐ」を用いて自分の経験値を上げていき、ストレスに打ち勝っていくのです。

この「たたかう」、「にげる」、「じゅもん」、「どうぐ」を選択できる能力を身につければ、職場だけでなく家庭やプライベートでも人間関係をうまく保つことができるようになり、生活でストレスを感じることも少なくなると思います。まだRPGをやったことがない方はまずは体験してみましょう。自分のストレス対処のヒントになるかもしれませんよ(終)。

このページを閉じる