欧米では、頭がいい人を表す言葉で「アカデミック・スマート」という言い方
があるそうです。日本語にすると「学術的な知識がある人で学校の勉強ができる人」という意味です。「アカデミック・スマート」の対になる語が「ストリ
ート・スマート」です。こちらは、机にかじりついて勉強するのではなく、過
去の経験や自分で得た情報をもとに得た知恵やノウハウでビジネスの現場をうまく立ち回り、仕事の結果を出す人です。「アカデミック・スマート」が学校
秀才タイプなら、「ストリート・スマート」は現場主義タイプといえるでしょ
う。勝間和代さんの著書「高学歴でも失敗する人、学歴なしでも成功する人」
(小学館101新書)にはこう書かれています。
日本人は「アカデミック・スマート」であること、つまり学歴が高いとか、与
えられた勉強に対してよい成績が取れるということが重要だということを親や
先生、いわゆる「世間」から徹底的にたたき込まれます。東大卒や早慶卒の肩書きを欲しがり、高校もそういった大学への進学率を誇ります。もちろん、統計学的にはアカデミック・スマートな人が実務能力に長けているということは否定しません。問題処理能力があり、即座に解を出す能力を持っています。しかし、決まっている問題に答えを出すのは、実は簡単なのです。ある程度のパターン認識能力を養い、勉強量をこなせば何とかなるからです。また、東大に受かろうと思ったときにいちばん効率的な方法は「解ける問題を着実に説くこと」。すなわち、難しい2割の問題を捨てて、残りの8割の比較的解きやすい問題をいかに効率的に解くかを学ぶことです。
(中略)アカデミック・スマートの試験ではストリート・スマート力のうちのごく一部しか計ることができないのです。最近では、大企業でも入社試験で学
校の成績をあまり重視しなくなってきたそうです。学校の成績にはインプット
とアウトプットの効率、いわゆる生産性を計ることができないという問題点が
あります。つまり、どのくらいの結果だったかということは分かるのですが、
その結果を出すためにどのくらいの時間を使ったのかという部分が人によってばらつきがあるのです。アメリカのハーバード大学では、いちばん成績のいい人たちは学生時代からさまざまな仕事でインターンをして学び、卒業後、大企業に行かずに起業します。マイクロソフトを作ったビル・ゲイツやフェイスブックを作ったマーク・ザッカーバーグはどちらもハーバード大学在学中に起業しています。一方日本では東大法学部の多くの人が官僚になりますが、起業する人は少数派です。もちろん、日本は起業しにくい文化風土であることは確かですが、より多くの理由は起業というのは「問題」も「答え」も決まっていないため、いわゆるアカデミック・スマートな人にとっては避けたいことだからではと考えます。アカデミック・スマートな人たちにとっては、国家公務員試験、外交官試験、司法試験など、わかりやすい目安がある試験の方が、自分のスキルセットと合致するわけです。・・・
今までの日本の教育は「アカデミック・スマート」を育てるためのものが中心
でした。高度成長時代の企業では、職場の仲間と足並みを揃えて決められたことを指示通りに効率的に処理できる人が求められてきました。個人の意見や考え方よりも、決められたことを指示通りに動くことが重視され、組織として「アカデミック・スマート」の人が評価されていました。しかし、時代は変わりました。より不確実性の高いビジネス環境の中では、現場対応力の優れたストリート・スマートな人が求められます。
仕事をする上で、学校教育で得た知識や理論は当然必要です。ただし、「知っている」だけではビジネスを有利に運ぶための武器にはなりません。ビジネスで必要なのは、学校の勉強で学んだ知識や理論を「知っている」ことではなく、それに加えて自分の経験や自分の情報や試行錯誤しながら身につけてきた生きた知識を使って仕事を進めていくことなのです。勝間さんは著書の中で「ストリート・スマートの力はコツさえつかめば、後天的に身につく」と言っています。よろしければ、この著書を参考にして、ストリート・スマートな人になるための習慣やスキルを身につけてみてはいかがでしょう(終)。
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