今回は、個人のストレス耐性に大きくかかわる「共感力」についてお話ししま
す。共感力とは「他人の気持ちがわかる力」や「他人のことを思いやる力」の
ことです。
たとえば、東京に住んでいる人が先日起こった「熊本地震」のニュースを地震直後にテレビで見たとします。そのときに、他人に共感できる人は「熊本に住んでいる人は辛いだろうな」と感じますが、他人に共感できない人は「東京に住んでいる自分には関係ない」と感じます。この「他人に共感できる度合」が共感力なのです。
ちなみに、「共感」と「同情」は違います。先ほどの熊本地震の場合、「熊本
に住んでいる人は辛いだろうな、私も辛くなる」と感じるのは同情です。こち
らは相手のネガティブ(否定的)な感情に引きずられて、自分もネガティブな
感情になってストレスを感じます。「熊本に住んでいる人は辛いだろうな、被
災者に寄付をしよう、ボランティアに行こう」というように、相手の気持ちを
理解して、ポジティブ(前向き)な感情からポジティブな自分の行動に移すの
が共感です。共感の場合の「相手の感情」は喜びや楽しみなどのポジティブな感情を含みますが、同情の場合はネガティブな感情だけです。「あの人が喜ぶ気持ちに同情した」とは言わないですよね。
共感力が高い人は相手の感情を理解し、「寄付をしよう、ボランティアに行こ
う」とポジティブな行動に移せますが、共感力が低い人は相手の感情よりも
「自分の立場」を優先してしまい、「自分には関係ない」とポジティブな行動
に移すことができません。たとえば、共感力が低い人が熊本地震のあと、東京で震度3くらいの地震が起こったとして、自分が乗っていた電車が止まってしまうと、感情がコントロールできずに「何で私がこんな目に合わなきゃいけないの」と怒りや悲しみを感じて、自分のストレスになります。逆に、共感力の高い人は自分の感情がコントロールできるので「熊本地震で被災した人に比べたら、大したことではない」と感じて、ストレスにはなりません。このように、共感力を高めることができれば、ストレスに対する抵抗力、つまり「ストレス耐性」が高まり、仕事や生活でストレスを感じることが少なくなります。
では、共感力を高めるためにはどうしたらいいのでしょう。まずは人と会話をしたり行動を共にするときに、相手の立場になって物事を考えるクセをつけましょう。たとえば、仕事で上司から叱られたときに、「腹が立つ」や「悲しい」と感じるかもしれませんが、同時に相手の言葉や行動に対して「なぜ、この人はこんなことを言うんだろう」、「こんな行動をする背景には何があるんだろう」と考えてみてください。そうすれば「きっとこの人は部長や家族から同じようなことを言われているんだろうな、上司もかわいそうだな」などと感じたり、」「もしかしたら、上司は私のことをすごく期待してくれているのかな、
がんばろう」とポジティブな行動に移ることができるようになるでしょう。
共感力が高まると大きな視点で物事が見られるようになり、小さなことを気にしなくなることでストレスを感じにくくなります。また、人に言われたことに
対してネガティブな感情が発生しにくくなり、それにより「嫌いな人」が減る
ことでストレスを感じにくくなります。さらに、人に共感できるようになるこ
とで、人からも共感されることになります。つまり、共感力は「共感する力」
と同時に「共感される力」であり、人から共感されることで人間関係も良くな
り、よりストレスを感じにくくなるのです。
そして、共感力を高めるために一番大切なことは「人の話を聴く」ということ
です。共感力が低い人は相手よりも自分の立場を大切にするので、自分の言いたいことは主張しますが、相手の言うことは聴かない傾向があります。当然
周りの人との人間関係も悪化しがちです。このような人が共感力を高めるためにはどうしたらいいのでしょう。多くの人の話を積極的に聴くことです。いろいろな立場の人の話を聴き、その度ごとに「なぜ、この人はこんなことを言うんだろう」、「この言葉の背景には何があるんだろう」を考えることで、それぞれの立場が理解できるようになり、「共感する力」が高まります。さらに、人の話を聴いて共感できると、会話の中で相手も自分に共感してくれるようになり、「共感される力」も高まり、ますます共感力が高まっていきます。みなさんも今以上に人の話を聴くことを心掛けて、共感力を高めることでストレスフリーな生活を送りましょう(終)。
|