健康社会学者の蛯名玲子氏が著書「ストレス対処力SOCの専門家が教える“折れない心”をつくる3つの方法」で紹介しているSOCの3つの感覚、
「わかる感」、「できる感」、「やるぞ感」について、前回までに「わかる感」
「できる感」の高め方についてお話ししました。今回は「やるぞ感」の高め方についてお話しします。
「やるぞ感」とは、つらいことや大変なことが起きたときに、「これは私にとっての挑戦だ」「これを乗り越えることは人生に必要なことだ」と信じ、日々の仕事や生活へのやりがいや生きる意味を見いだせる感覚のことです。
「やるぞ感」が低い人は、つらいことや大変なことが起きたときに「自分では
この状況は乗り越えられない」「自分には今の状況は変えられない」と考えて、あきらめたり、やる気を失ってしまいがちです。そうすると、「自分は役に立たない人間だ」「自分は世の中に必要とされていない」と自分の存在価値を見いだせなくなります。
「やるぞ感」を高めるためには、まず自分の存在価値に自分で気づいて自分で認めることが大切です。そのために、一番簡単なことは「買物をする店や食事をする店やその他のさまざまなサービスでのお得意様になる」ということです。
多少お金はかかりますが、店に行くたびに店の人から「いつもありがとうござ
います」と言われれば、「自分はこの店に必要とされているんだ」と感じるこ
とができます。
また、ボランティアなどに参加をして「人や自然のためになる行動をとる」と
いう方法も有効です。ボランティアは人や自然に対する貢献活動であるとともに、それらの存在価値を感じて、認めることにもなります。自分以外の存在価値を認める活動をすることで、自分自身の存在価値を認めることにつながります。また、ボランティア活動をすることで、ボランティア先の人から「ありがとう」と感謝されることで、自分の存在価値に気づくことができるのです。
先日、DVDで「世界から猫が消えたなら」という映画を見ました。これは、
30歳の青年がある日突然、脳腫瘍で余命わずかと宣告されるが、自分そっくりの悪魔が現れ、「世界から何か一つずつ消すごとに一日だけ寿命を延ばす」という契約をするという話です。そして、その青年は電話や映画などを一日ごとに消して、自分の寿命を延ばしていきます。ところが、その消した「モノ」だけでなく、さまざまな人との思い出や記憶も同時に失って、あらためてモノや人の存在価値に気づいていきます。自分や自分以外のモノや人の存在価値に気づくために、そして「やるぞ感」を高めていくためにも、この映画を是非ご覧ください。
最後に、「やるぞ感」を高めるために、つらいことや大変なことが起きたとき
には「この状況を乗り越えよう」というチャレンジする言葉を発するクセをつ
けましょう。テニスプレイヤーの錦織圭が全米オープンでベスト4に進出した
ときにプレッシャーのなかで発した「勝てない相手はもういないと思う」とい
う言葉やテレビドラマで厳しい状況に追い込まれた半沢直樹が発した「やられたらやり返す、倍返しだ」という言葉やソフトバンク社長の孫正義氏がツイッターで一般ユーザーから自分の髪の毛のことをからかわれたときに発した「髪の毛が後退しているのではない、私が前進しているのである」という言葉などを使っていると、「この状況を乗り越えよう」「不利な状況を変えてみよう」という気持ちが出てくるようになり、きっと「やるぞ感」も高まるでしょう(終)。
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