安全JAWSちゃんのハートLetter
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ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
仕事のプロ意識

前回ご紹介した「仕事の目的意識と働きがい」の話が大変好評だったので、今回は「仕事のプロ意識」という話をさせていただきます。

「スリーボンド」という工業用の接着剤やシール剤の製造と販売を行っている会社があります。スリーボンドの前身「東京スリーボンド」は、1955年
(昭和30年)に東京江東区で、社長以下4名からはじまりました。会社創業
のそもそものきっかけは、車から路上に漏れ落ちた油を見た創業者である鵜久森 税氏が「小資源の日本にとって、たった一滴の油漏れでも大きな損失となる」と考え、「ロスを防ぐ仕事をしよう」と決心して会社を興したといいます。

スリーボンドでは創業時の独創的な発想を大切にして、社是に「働く場は個人主義でもなく全体主義でもない、各人の自覚に基づいた協力精神によって向上されなければならない」と掲げられています。ある取引先の人がその精神に驚いて感動したという事例を紹介します。毎年必ず一回来日し、スリーボンドの東京本社と関西の支店を行き来している海外の取引先の人がスリーボンドの社員に東京本社や関西に行くための新幹線の切符の手配を頼んでいました。彼は何度か行き来するうちに、手配をしてもらった切符が下りのときは必ずグリーン車の真ん中当たりの右側の窓側、上りのときは左側の窓側の席であることに気がついたのです。不思議に思った彼は手配をしてくれる女子社員に聞いてみました。すると、彼女は「お客様にどうしたら満足していただけるかを、常に心掛けています。その一つが日本でいちばん美しい富士山をたっぷりとご覧になっていただくことだと思いました。また、比較的静かな真ん中の席を予約するようにしています」と笑顔で答えました。

「仕事のプロ意識」とはお客様を満足させ、自分を満足させ、自分の能力を高める意識です。言い換えれば「仕事で自己実現しようとする意識」のことで、自分の能力や個性を仕事で発揮しようとする意識です。また、自分の存在価値を仕事で証明しようとする意識です。その結果が企業の売上や利益の向上に結びつくのです。ここで、仕事のプロ意識を活かしたもう1つの例を紹介します。
これは、八幡製鉄と富士製鉄とが合併して「新日本製鉄」になる前、富士製鉄 の名古屋工場での話です。

ある時、富士製鉄で経費節約運動がはじまりました。当時の担当取締役であった武田 豊氏(のちの新日本製鉄社長)は経理部長と一緒に各部各課をまわって従業員に協力を求めました。そして、最後に名古屋工場の電話交換の女性たちと懇談しました。部門としても経費がかかる部署でもないため、武田氏はあまり期待せずに自ら経費節約の必要性を説いたそうです。ところが、彼女たちは武田氏の話に感動し、私たちも何かやってみようということになったそうです。相談の結果、「長電話をかける人に短い電話をするように進言する」ということになりました。彼女たちは自分たちでお金を出しあって、3分間の砂時 計を買いました。そして、それにピンクのリボンをつけて、早朝にこれを管理職の人たちの机の上に置きました。リボンには「短い電話にご協力下さい・・・ 交換室」と紙片をつけておいたそうです。その朝、出勤してそれを見た管理職の連中は、苦笑しながら彼女たちの気遣いに心打たれました。その日から、名古屋工場の電話料金はぐんと減ったそうです。

「儲(もうけ)」という字は「信」と「者」から成り立っています。つまり、儲けは自分に対しての「信者をつくること」によって可能になります。すべての部門の人が仕事のプロ意識を発揮して、自分の仕事の目的を考えて仕事に取り組むことによって、自分の仕事の信者を増やしていくことが企業の儲けにつ ながるのです。みなさんも自分が製造部門か営業部門か事務部門かに関らず、 プロ意識を持って仕事に取り組んでいきましょう(終)。


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