安全JAWSちゃんのハートLetter
過去の記事
ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
イエデンストレス

「イエデン」とは家庭にある固定電話を指しますが、「イエデンストレス」と
は知らない人からの電話に出るストレスのことで、家庭にある固定電話に接する機会が減っていく中、就職した若手社員や若手職員が職場で固定電話にどう対応したらいいか分からず抱えてしまうストレスのことです。最近、これが原因でこころを病んでしまったり、仕事を辞めてしまうということが企業や自治体で起こっています。

イエデンストレスが発生している原因ははっきりしていて、スマホなどの携帯電話の普及で固定電話に接する若者が減ってきていることです。携帯電話は誰から電話がかかってきたかが表示されますし、そもそも友人や家族など携帯番号を知っている人からかかってくるため安心して電話に出られます。一方、固定電話は電話に出るまで「誰からかかってきたか」が分かりませんし、自分宛てにかかってきた電話かどうかも分かりません。

私は現在53才ですが、私が子供のころには当然携帯電話は普及しておらず、 家庭の電話は固定電話でした。家に電話がかかってくると「もしもし、○○ですが」と自分で名乗って、相手の名前を確認してから親に電話を替わるということを経験し、これによって電話の対応について自然に教わることができました。また、逆に友だちに電話するときは、友だちの親が電話に出ることが多く、自分の名前を名乗ってから「○○さんに替わっていただけますか」と敬語を使って電話を対応することも教わりました。さらに、自分の両親が電話に出るときには、普段の自分たち子どもへの厳しい口調とは全く違い、とても楽しそうに話していることに衝撃を受け、場面や相手によって口調に変えること、顔の見えない相手への対処法を学ぶことができました。

ところが、携帯電話が普及するにつれて固定電話の役割は変わってきました。「一家に固定電話一台」から「一人に携帯電話一台」の流れの中で、固定電話は通話をする電話機能よりもファクスの送受信やクレジットカード契約などの「信用証明」として使われるようになっていきました。また、携帯電話を持たないお年寄りが固定電話に出ることで「振り込め詐欺」の被害にあうなど、犯罪や詐欺的商法の被害が発生していることもあり、今後は固定電話の役割はますます変化すると考えられ、もしかしたら「公衆電話」のように多くが姿を消す事態もありえるでしょう。

一方、企業や自治体にある固定電話は家庭にある固定電話と違い、その必要性と役割を保っています。外部に向けては、名刺に電話番号を記載することで取引先との連絡機能や顧客からの注文・問い合わせとしての役割などで使われています。また、内部においては他の事業所や他部署との連絡としての機能を果たしています。

家庭の固定電話「イエデン」を経験していない新入社員や新入職員が営業などで顧客や取引先に名刺を配ってから、職場で「○○さん、A(会社)のBさんからお電話です」と言われて電話の対応をする、逆に自分の知らない顧客や取引先から電話がかかってきたときに職場の他の人に電話を取り次ぐことに戸惑いや悩みを抱くことは想像に難くありません。

私たちの世代はイエデンの体験を通じて、子供時代に仕事で使う電話テクニックを学ぶことができました。しかし、「もしもし?」と相手が誰かを確認する必要もなく、「今、どこ?」から話しはじめられる携帯電話しか経験しておら
ず、家の固定電話で話の内容を親に聞かれたり、長電話で親から叱られた経験がない新入社員や新入職員に固定電話の対応の仕方をしっかり丁寧に教えることが今後の企業や自治体の人材教育で必要となってきます。

また、今後の新卒の採用試験では、大学のキャリアセンターがしっかり学生に教えている面接やグループワークや適性検査でコミュニケーション能力を測るよりも、「イエデンテスト」を実施することで「真のコミュニケーション能力」 を測ることも企画してみてはどうでしょうか。いずれにしても、企業や自治体の採用・教育担当者の方は「固定電話の対応」は社会人としての常識的な知識から「社会人になってから学ぶスキル」になっていることを今一度理解して 今年の新入社員・職員研修のメニューを検討することをお勧めします(終)。



このページを閉じる