安全JAWSちゃんのハートLetter
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ロードレイジ

2017年6月に東名高速道路のパーキングエリアで、枠外の駐車を注意された車の運転手が逆上して猛スピードで注意した人が乗ったワゴン車を追跡し、ワゴン車を追い抜いて、進路を妨害して減速、追い越し車線に無理やり停車させた結果、ワゴン車は後ろから走ってきたトラックと衝突し、乗車していた夫婦2人が子供たちの前で死亡するという悲惨な事件が起きました。この事件をきっかけに「ロードレイジ」という言葉が日本で注目されるようになりました。

ロードレイジとは、車を運転中に割りこまれたり、あおられたりすることに腹
を立てて、あおり返したり、幅寄せをしたり、クラクションを鳴らしたりする などの報復行動のことを言います。一般社団法人日本アンガーマネジメント協
会代表理事の安藤俊介氏によると、ロードレイジはアメリカでは1980年代
にすでに社会問題になっていたそうです。日本でもトラブルになることはよく
ありますが、アメリカでは銃殺事件にまで発展したからです。アメリカではこ
のようなロードレイジなどの危険運転はもとより、スピード違反者に対しても
裁判所からアンガーマネジメント研修を受講するよう命令が出ることもあり、
それだけ車の運転と怒りの感情には深い関係があると考えられているのです。

なぜ、ロードレイジが起こるのでしょう。理由はいくつか考えられますが、一
つ目は車が自分の思い通りに動く「鎧(よろい)」のようなものだからです。
車を運転するときは、大げさに言えば戦車や装甲車に乗っているのと変わらない気分になるところがあります。自分が守られている空間にいると感じることで気が大きくなります。もう一つは匿名性です。車にはナンバーがついていますが、調べないかぎりは誰の車か分かりません。さらに、車は自分の意のままに操れるので、「自分が強くなった」という万能感を持ちやすいことなどが挙げられます。

ロードレイジの加害者になりやすい人の特徴として、「自分の運転は平均以上だと思っている」、「車線変更を頻繁にする」、「高価な車や大きい車に乗っている人間が偉いと思っている」などが挙げられます。みなさんはどうでしょう。どれかに当てはまる方は注意が必要です。また、車を運転すると性格が変わる人がいます。普段は穏やかなのに、ハンドルを握った瞬間から気が荒くなったり、他の車に文句を言ったりする傾向のある人は要注意です。アメリカの運輸局では「誰もがロードレイジの加害者にも被害者にもなりえる」と注意喚起をしているそうです。

ロードレイジの加害者にならないためには、まずは「時間に余裕を持って動くこと」です。急いでいると、どうしてもイライラしやすくなります。車の運転中にイラッとするようなことがあったときには「気持ちを落ち着かせる呪文」を用意しておくとよいでしょう。たとえば、「焦っても仕方ない」、「のんびりいこう」、「落ち着け、大丈夫」などです。また、ロードレイジの被害者にならないために「追い越し車線でゆっくり走らない」、「緊急時以外にクラクションを鳴らさない」、「危険運転者には抜いてもらうこと」などを心がけま しょう。

アメリカでは、アンガーマネジメントを受講するときに最初に習う言葉が 「RUN!」なのだそうです。「RUN!」の意味は「走れ!」ではなく、 「逃げろ!」です。その場にいて人をトラブルに巻き込む、巻き込まれる前にその場から離れるということです。その場にいては怒りの温度が上がり続けてしまい、怒りに支配された行動をしてしまうからです。日本人は、なぜかその場から離れることを良しとしない文化がありますが、「その場から離れる」ということはアンガーマネジメントでは立派な戦略なのです。ロードレイジの加害者や被害者にならないために、とにかくその場から離れるよう心がけましょ う。

自分はイライラしやすい性格なので「ロードレイジの加害者になりたくない」
という方だけでなく、仕事や生活の日頃のイライラを解消したい方は、安藤俊 介氏の著書「イライラしなくなるちょっとした習慣」(大和書房)をお読みく
ださい(終)。

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