今回は、自分の人生の終末のためにする活動である「終活」についてお話しします。具体的には、葬儀やお墓や遺産相続などを元気なうちに考えて準備する活動のことですが、最近は「終活ブーム」のようです。
私も今年で54
歳になって、「今のうちに人生の最期に向けての事前準備をしてみよう」と考え、ある葬儀会社から「エンディングノート」を取り寄せました。エンディングノートとは、自分に万が一のことが起こったときのために、葬儀やお墓や遺産相続などについて、あらかじめ家族やまわりの人に伝えたいことを書き留めておくノートのことです。
ノートには葬儀やお墓や遺産相続などの自分の希望を書く欄もあるのですが、まずは「自分のこと」を書く欄から始まります。生年月日や出身地、学歴と職歴、趣味などの自分の好きなこと、そして自分の家族や知人の情報などを書きます。私も書いてみましたが、書いているうちに「履歴書を書いているみたいだな」と思いました。でも、自分の履歴を書くのは学校や大学の入学願書や採用試験を受けるときのエントリーシート、そして婚活のプロフィー
ルなど、自分をPRして自分の希望を叶えるために書くイメージがありまし
たが、今回は「自分の家族や知人がこのノートを見るときには自分は死んで
いるのに、何のために書くんだろう」と不思議な気分になりました。
そこで、終活カウンセラー石井公子氏の著書である「失敗しないエンディン
グノート」(法研)を読みました。石井氏は「エンディングノートは人生の棚卸しツールである」と言っています。「エンディングノートを書くという作業は終活のためだけでなく、まず自分とは何者か、どんな人生を送り、どんなことが好きで、どんなことが楽しくて、どんなことが嬉しいのかを思い出しながら並べてみるという『自分の心の整理整頓』をする目的があり、それにより、新しいモノやコトに出会える可能性が広がり、そのうえで、自分にとって何が大事で、何が大事でないのかを見極め、その優先順位をつけることができるようになり、残された今後の人生をどう生きていくかを考えることにつながっていくのです」と書かれています。
私が書いたエンディングノートの最後のページは「未来のその日までにした
いこと」を書き込むページで、行きたい場所、会いたい人、始めたいこと、
習いたいこと、謝りたいこと、これからの夢、最後に言いたいことなどを書
く項目があります。まさに、エンディングノートを書くことで、自分の過去と現在を振り返り、忘れていたことを思い出し、やりたくてもやっていないことを再確認して、未来に向けて人生を充実していくとともに、あらためて自分の死のあり方について考えることができます。
私は自分でエンディングノートを書いてみて、単に自分に万が一のことが起
こったときに、葬儀やお墓や遺産相続などの自分の希望を家族やまわりの人に伝えるということが目的ではなく、人生の終末を考えることを通じて自分を見つめ直し、終末までの人生をより自分らしく生きるためにどうしたらい
いかを考えるということが大きな目的であることに気が付きました。また、
終活は自分の人生の終末における「死に方」を考えるのではなく、人生の終
末までの「生き方」を考える活動であることにも気づきました。
みなさんも是非エンディングノートを書いてみてください。きっと、「自分の人生の終末が近づいている」という不安の気持ちより、「これからの人生が楽しみだ」というポジティブな気持ちが増えることによって、これからの人生が充実していくと思いますよ(終)。
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