私が前職のデパートを退職して、東京に来てから12年ほどになります。東
京で働き始めて驚いたことの一つが「地下鉄に乗るときに地上からホームまでがもの凄く深い」ということでした。研修の打ち合わせでお客様のところ
に行くときに地下鉄を利用するのですが、よく六本木駅で都営大江戸線に乗り換えることがありました。すると、今まで見たことがないような「長いエ
スカレーター」を降りることになります。六本木駅は日本一深い地下鉄駅の
ようです。さらに、もっと驚いたことがあります。今度は都営大江戸線からの乗り換えのときは、その長いエスカレーターを上がるのですが、私が「エスカレーターで片側を空ける」という暗黙のルールに基づいて左側の手すりを持って立っていると、その右側を小走りに上っていく人が何人もいるのです
それを見て、「よくこんな長いエスカレーターを登れるな」「東京はせっかちな人が多いな」「運動不足の人が多いのかな」などと思うのですが、このような性格の人は時間や他人や自分と競争し続け、闘争的な行動を毎日続けることになります。このように、過度に競争心が強く、攻撃的でせっかちな性格を「タイプA行動パターン」といいます。メンタルヘルスの第一人者である山本晴義先生が監修された「ストレスマネジメント−実践的セルフケア」
(押川聖子、新興医学出版社)では、ストレスに陥りやすい性格としてタイプA行動パターンが以下のようにわかりやすく説明されています。
1950年代、アメリカの医師フリードマンとローゼンマンは、心臓病外来の待合室の椅子の前の部分が、どれもすり切れているのに気づきました。待
合室の様子を観察すると、心臓疾患の患者は待ち時間にイライラした様子をみせ、浅く腰かけている人が多いということがわかりました。このことから、
虚血性心疾患患者に特有な行動パターンがあることを発見し、タイプA行動
パターンと名づけました。タイプA行動パターンの人は、競争心が強く、攻撃的でせっかちな傾向が強いという特徴があります。同時にいくつもの仕事
を抱えてアグレッシブに行動し、出世欲も強く、常に時間に追われています。
また、自らストレスの多い生活を選び、ストレスに対しての自覚があまりな
いままに生活する傾向があり、結果として、血圧が上がる、脈拍が増えるな
ど、ストレスに対する反応によって、血管や心臓の病気になりやすいという
わけです。一方、タイプA行動パターンとは反対の傾向を持つタイプB行動
パターンがあります。マイペースで、リラックスしており、非攻撃的である
などの性格傾向を持つ人のことです。タイプB行動パターンの人は、タイプ
A行動パターンの人よりも心臓疾患になりにくいことが報告されています。
また、タイプC行動パターンという、がんになりやすいといわれる性格傾向
も指摘されています。タイプC行動パターンの人は、自己犠牲的であり、周
囲に気を遣い譲歩的、怒りなどの否定的な感情を表現せずに押し殺し我慢強
い、といった特徴があります。
さて、みなさんは「タイプA」、「タイプB」、「タイプC」のうち、どの行動パターンでしょう。ちなみに、前述の「エスカレーターで片側を空ける」という習慣ができたのは1967年の大阪が最初のようです。阪急梅田駅の改装により新しいエスカレーターができ、阪急電鉄が「左側をお空けください」と放送を始めました。1970年の大阪万博でもエスカレーターの左側空けを来場客に呼びかけて定着しました。東京では反対に「右側空け」が定着したようです。ところが最近では、「危険ですから、エスカレーター内は歩かないでください!」などのポスターやビラを見かけるようになりました。
ストレスをためないために、そして血管や心臓の病気の危険を少なくするた
めにも、エスカレーターでは手すりにつかまって、歩かないほうがいいかも
しれません(終)。
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