2017年のユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選ばれた「睡眠負債」
は睡眠不足が借金のように積み重なって蓄積している状態を表します。この状態が続くと、仕事や家事などの日々の作業効率が低下するだけでなく、命にかかわる病気のリスクを高めることになります。また、一度この状態に陥ると、負債を返済するために休日に「寝だめ」をしようとしても、負債は解
消できません。休日に長時間寝てしまうと生活のリズムが乱れ、翌週の睡眠に悪影響を及ぼすことになるからです。
2017年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、30代から50
代の平均睡眠時間は6時間未満が約4割、「睡眠で休養が十分にとれていない者」の割合は30代から50代で27〜30%と、特に働き盛りの人にお
ける睡眠負債の蓄積が顕著になっています。また、2018年のOECDの
統計によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、欧米の先進国と比べると1時間ほど短く、調査した加盟国中の「ワースト1」という結果で、
日本という国が「睡眠負債大国」になっています。
このような睡眠負債の状態が続くと、人間の体に様々な影響が出ることが多くの調査・研究で明らかになってきています。「自治医科大学コホート研究」によると、健康な男性では睡眠時間が6時間未満の場合、7〜8時間の睡眠と比べて死亡する危険度が約2.5倍に上昇するという調査結果でした。この他にも、「睡眠不足により交通事故を起こしやすくなる」や「免疫力の低
下により風邪や肺炎にかかりやすくなる」などのデータも示されています。
では、眠れない状況を改善して睡眠負債から脱出するためにはどうしたらいいのでしょう。中部大学生命健康科学研究所特任教授の宮崎総一郎氏が産業カウンセリング(発行:日本産業カウンセラー協会、2019.11)の
「寝ないと危険です!」の記事で、睡眠負債に陥らないための具体的方法を以下のように書かれています。
「眠れないという方にまず改善してもらいたいのは『光』です。眠りに導くホルモンはメラトニンです。これは青い光によって分泌が抑制されてしまいます。太陽光は80%が青い光なので、日中の覚醒には有効です。ところが蛍光灯やパソコン、スマートフォンも青い光なので、これらによってもメラトニンが分泌されにくくなってしまうのです。まず、寝る1時間前には間接照明や白熱灯などを使って部屋を暗くしてください。さらに寝る30分前にはテレビを消すようにすればメラトニンが分泌されやすくなります。逆に朝は心の安定に欠かせないセロトニンが太陽光によって分泌されるので、スッキリ目覚めることができます。遮光カーテンの部屋で寝るなら、10センチほど隙間を開けて、光が入るようにしてください。太陽光はまぶたの上から脳に信号を送って、目覚めやすくしてくれます。セロトニンは筋肉にも働きかけますので、まぶたはすっと上がりますし、背筋も伸びます。光を浴びることで人間の体内時計は25時間から24時間に
調整されます。毎日、光を浴びて体内時計を調整する必要があるので、起きてから2時間以内に10分以上は太陽光を浴びてください。雨が降っていたリ、曇っていても光に体が反応しますので、晴れている日と同じように外に出てください。」
まずは、睡眠負債の解消には「太陽光を浴びる」ことを心がけましょう。次
に、私が眠れないときに実践している「こころと体と呼吸を整える」方法を
紹介します。やることは簡単です。布団の中で眠れないときに、自分の手の
脈を測りながら深呼吸をするだけです。脈と呼吸を確認しながら「今、自分
は生きている」と意識するだけです。私はこれでいつも眠っています。その
他にも、私がみなさんにお勧めする「眠れないときにやっていただきたいこ
と」を3つ紹介します。
・落ち込みや心配や不安で眠れないときに「思考停止法(ストップ法)」を
やってみる
・緊張や不安で体に力が入って眠れないときに「1/f ゆらぎ」のリズム
を聴く
・緊張で呼吸が小さくなって眠れないときに「横隔膜呼吸法」でリラックス
する
こちらはいずれも「キティこうぞう ○○○○(カギカッコの中の言葉)」
で検索していただくと、私が過去に書いたコラムがヒットして、やり方や内
容をお読みいただけます。ぜひ検索してみてください(終)。
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