今回は、私がメンタルヘルスの勉強のために読んだ漫画「さよなら絶望先生」を紹介します。「さよなら絶望先生」は2005年から2012年まで週刊
少年マガジンで連載された久米田康治氏による漫画作品です。主人公は教師である「糸色 望(いといろ のぞむ)」。横書きで書くと「絶望」となり、
名前の通り「超ネガティブな教師」です。ストーリーは、彼が始業式の日に
首つり自殺を図るところから始まります。彼は、そこに通りがかった少女に
助けられます。その後、新しく担任となったクラスに行くと、自分の命を助
けてくれた少女はそのクラスの生徒。彼女の名前は「風浦 可符香(ふうら
かふか)」、「人が通ったところに、道は出来る」という名言で有名なチェコ出身のドイツ語作家であるフランツ・カフカ氏の名前をもじったと考えられます。彼女は先生と逆で「超ポジティブ少女」で、先生の首つりについても「身長を伸ばそうとしていたんですね」と、物事をなんでもポジティブにとらえるキャラクターです。
そんな彼が新しく赴任したクラスは彼女以外にも、引きこもり少女、超恋愛
体質のストーカー少女、二重人格のバイリンガル少女、不法入国の難民少女、
メール毒舌少女など、さまざまなキャラクターの問題児ばかりが集まる教室です。また、ストーカー少女の名前が「常月(つねつき)まとい」など、毎
回新しく登場するキャラクターの名前にも注目です。これらの問題児が起こ
すさまざまな事件に彼が巻きこまれたり、逆に彼自身が事件を起こしたりし
ながら、ストーリーは続いていきます。
そして、この漫画の第五十五話にでてくるのが、加害妄想少女の「加賀 愛
(かが あい)」です。「加害妄想」とは、強迫性障害の一種で「誰かに危害や迷惑を与えているのではないか」という妄想から不安になり、周りの人に確認したり、新聞やテレビの報道を確認するという症状が起きます。彼女の加害妄想的な言動に対して絶望先生は言います。「映画館で後ろの人に迷
惑をかけているんじゃないかとものすごく浅く座ったり、レジで後ろの人に
迷惑かけるんじゃないかと小銭が出せなかったり、隣人に水の音が迷惑になるんじゃないかと夜中にトイレ行くのをガマンしたり、多かれ少なかれ日本人にはそういうところがあるのです」と。さらに、「幼いころから『日本は
世界に迷惑をかけた』と繰り返し教えられた戦後日本の自虐教育が生んだあだ花、それが加害妄想です!」と言っています。
この漫画に載っている「さよなら絶望先生版 加害妄想性格診断」を紹介し
ます。3つ以上チェックがついたら、あなたも加害妄想です。
□ 美容室でかゆいところが言えない
□ 2冊以上、本にカバーをかけてと言えない
□ タクシーのワンメーターの距離は歩く
□ 宅配便の来る時間帯は一歩も外に出ない
□ JAFの会員なのにJAFを呼べない
□ 自動改札はプレッシャーだ
□ コンビニでくじが当たると苦痛だ
□ 裾上げはお母さんにやってもらう
□ カベサークルはプレッシャーだ
□ アニメ●トの袋を持って東急東横線に乗れない
新型コロナ感染後に自宅療養していた女性が周囲の人が新型コロナに感染したことを知って、「自分がうつしたのではないか」と悩んで自殺するという痛ましい事件が起こりました。自殺まで至らなくても、新型コロナに感染し
た人の中には同じ悩みを持っている人も多いと思います。また、医療従事者
の方が「迷惑をかけるから、自分は絶対に感染できない」と悩んだ結果、家
に帰らずに車で寝泊まりしているという報道もありました。このように、多
くの人が「人に感染させるのではないか」、「自分が感染したら、周りの人
に迷惑がかかる」という加害妄想から発生する不安やストレスを抱えている
と思います。
そのような加害妄想から発生する不安やストレスを無くすことはできないか
もしれませんが、それを軽減する(減らす)ために次のことをやってみまし
ょう。まずは、「人に感染させるのではないか」という自分の考えが正確な
情報や根拠に基づいた事実なのか、それとも可能性の低い憶測なのか、を自分の中で確認することです。次に、テレビのニュースやワイドショー、そし
てネットニュースなどで新型コロナの不安をあおる報道を見るのは最小限に
とどめることです。最後に、もし本当に不安やストレスが解消されなければ、
一人で抱え込まずに周りの人に相談してみましょう。「私の考えは可能性の
低い憶測にすぎない」、「報道は無責任に不安だけをあおっている」、「人
に相談したら楽になった」と思うことができたら、加害妄想から脱出できる
でしょう。いずれにしても、新型コロナ感染の早期収束を祈るばかりです
(終)。
|