安全JAWSちゃんのハートLetter
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身度尺

「身度尺(しんどじゃく)」について、食器から食品から家具まで多くの商品を扱っている無印良品で商品の開発や改良を行っている「くらしの良品研究所」のHPのコラムに次のような記載があります。

「ピンと張ったネコのひげは、幅がそのネコの腰幅と全く同じになるといいます。逃げるネズミを追いかけて狭いところを通るとき、ひげがアンテナとなって、そのすき間を通れるかどうかを瞬時に測るのだとか。身体の一部が、
そのままモノサシになっているんですね。人間界にも、こんな風に身体に聞
いて編み出された寸法があり、『身度尺』と呼ばれます。」・・・。

身度尺を説明する前に、長さの単位を尺や寸などで表す「尺貫法」について
お話したいと思います。尺貫法は日本古来の単位のひとつで、古来より日本人の伝統文化の形成に深くかかわってきました。昭和41年(1966年)
には尺貫法を取引および証明の計量に用いることが禁止されましたが、木造建築や伝統工芸の世界では、現在も尺貫法で作業が行われる場合があります。
尺貫法の元になったのは日本人の身長や手の長さや大きさ、そして歩幅などが、次第に個々の違いを越えた共通の単位として使われるようになったのです。

尺貫法では1寸は約3センチ、1尺は約30センチ。1間は6尺ですから約
180センチに当たります。ちなみに、シャクトリ虫は材木などの長さを測るときに、尺を測る人の指の動作に似ているために名付けられました。このように、ものをつくるときに人間の身体の寸法に合わせることを「身度尺」で測るといいます。日本人には、そうやってものや道具をつくる知恵があったのです。

たとえば、食器がそうです。茶碗は、右手と左手の親指と親指、ひとさし指
とひとさし指をあわせて輪を作ったときの径とあうのが一番持ちやすい寸法
だといわれています。材質や産地が違っても、口径は男物が約4寸(120
mm)、女物が3寸8分(114mm)と、サイズは性別になっています。
手の大きい男性用、手の小さい女性用があったほうが使いやすいというとこ
ろから「夫婦茶碗」の大小が生まれたのです。

ビールびんを右手で握ってみて下さい。胴周りの半分以上に指がかかり、し
っかりと持てることがわかるでしょう。そのままコップに中身を注ぐために傾けても、びんは手から滑り落ちません。ビールびんの直径は2寸5分(75mm)。この大きさは湯呑み茶碗と同寸です。日本の湯呑み茶碗には把手がありません。それなのに誰も不便を感じないで使っているのは、ちゃんと大きさに工夫があるからです。

また、昔から使われてきた丸いお盆の直径は、1尺2寸(360mm)になっています。腰の幅に合わせたものです。この大きさだと両手でお盆を持ったとき、肩幅から腕がはみ出しません。だから、二人の人間がお盆を持って廊下をすれ違うとき、どこにもぶつけないですみます。その他にも、親指と人差し指を二辺とする直角三角形を作った際に、その指の先端どうしを結んだ斜辺の長さを「咫(あた)」と呼びますが、この長さは身長のおよそ1/10に相当します。時代を経るにつれて、日本ではいつか一咫半(ひとあたはん)の長さ、つまり咫の長さの1.5倍がその人に合ったお箸の長さということになりました。

このように、食器を手で持って食べる文化を持つ日本の器は、日本人の手の寸法から割り出した身度尺により、「生活の知恵」ともいえる心憎いほどの配慮がなされた大きさになっているのです。しかし、最近ではデザインやセンスという名のもとに、使い勝手の悪いものも氾濫しています。毎日使う食 器を、単に「カッコいい」とか「立派に見える」、「高級感がある」という視点で選ぶと食事がストレスになることも考えられます。日本の伝統ともいえるこの「身度尺」を守って、「いかに扱いやすいか」、「いかに居心地がいいか」、「いかに楽しく食事ができるか」という尺度で選ぶことを心掛けることが大切なようです。

また、その他の生活や仕事でも身度尺を守ることが大切です。「カッコいい」
などの理由で自分の身の丈以上の生活や仕事を求めるとストレスになることが多いと思います。自分の身度尺に合った生活や仕事を選び、イキイキと楽しく過ごしましょう(終)。


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