私の趣味の一つに「全国酒蔵巡り」があります。全国にある日本酒や焼酎
(時にはウィスキーやワイン)の酒蔵を訪問して、試飲をしてお酒を買ったり、酒蔵Tシャツなどのグッズを買ったりします。竹下登元総理の実家である島根県の酒蔵「竹下本店」や清酒久保田(千寿や万寿)で有名な新潟県の酒蔵「朝日酒造」など、今までに北海道から鹿児島県まで約300の酒蔵を訪問しました。その中で、山梨県大月市にある笹一酒造という酒蔵で「木火土金水(もっかどこんすい)」という焼酎に出会いました。
子どものころに、親が買ったレコードで「月月火水木金金」という軍歌を聞いていました。これは「昔の軍人は土日返上で働いていた」という意味であることを親から教わりました。大人になってからカラオケでこの歌を歌ったら、労働組合の先輩から「この歌は労働組合では禁止だ!」と怒られたことを記憶しています。話を元に戻しますが、「木火土金水」にはどんな意味があのかを調べてみました。
「陰陽五行でわかる日本のならわし」(長田なお著、淡交社)によると、木火土金水とは「宇宙の一切の万物は木・火・土・金・水の五つの気(五行)
によってできている」という「五行説」の考え方に出てくる古代中国の自然
哲学の言葉です。また、この世の中の一切の万物は陰陽二気によって生じ、
木・火・土・金・水の五行に配当されるという思想を「陰陽五行説」というそうです。宇宙には、この五つの気が絶えず循環しているとされ、その五つの気が巡っていること、運行していることを「行」と表し、五行というそうです。さらに、五行には「相生(そうしょう)」という関係と「相剋(そうこく)」という関係があり、五行の相生、相剋による五つの気の勢いの変化やそれに伴う森羅万象の生成、変化を解く考え方が陰陽五行説になるそうです。具体的に相生、相剋について説明します。
「相生」とは、何かを生み出していく親子関係のような、穏やかな、自然な、
協力的な関係をいいます。つまり、ある物事がほかの物事を促進したり、育
てたりする関係です。木が擦れて火が発生し、火が燃えて灰(=土)になり、
土が集まって山となった場所からは鉱物(=金)が産出し、金は冷えると水滴がつき、水は木を育てる、という具合に木→火→土→金→水→木の順に相手を強める影響をもたらすということが「五行相生」です。
「相剋」とは、やっつける、いじめるなどの意味で、ある物事がほかの物事を制約したり、抑制したりする関係を表します。木は根を張って土を締め付けたり土の養分を吸い取ったりし、土は堤防などで水の流れをせき止め、水
は消火活動で火を消し、火は高温で金属(=金)を溶かし、金属の刃物(=金)は植物(=木)を切り倒す、という具合に相手を弱める影響をもたらすということが「五行相剋」です。相生と相剋は「陽」と「陰」の関係であり、両者存在してこそバランスが成り立ちます。それぞれの気は高ければいいというわけではなく、抑えることも必要であり陰と陽の良いバランスを保つことがより大切だと陰陽五行説は伝えています。
さて、この陰陽五行説を私たちの職場や家庭の人間関係に当てはめてみます。
私たちは、職場では上司・部下や先輩・後輩や同期生たちと様々な形で、コミュニケーションをとっています。また、家庭では祖父母・父母や兄弟姉妹や
配偶者や子・孫とコミュニケーションをとっています。その他にも、学校では先生や同級生や先輩・後輩と、サークル活動ではメンバーや顧問の先生や
監督・コーチとコミュニケーションをとっていると思います。
自分に関わる人はそれぞれ立場が違い、持っている価値観も違います。つまり、ある人の気は木であり、ある人の気は火であり、土であり、金であり、
水の人もいるでしょう。自分がこの5つのうちのどの気であったとしても、自分が相手を育てたり相手に育てられたりし、時には自分が相手の足を引っ張ったり相手に足を引っ張られたりします。そして、相手を褒めたり相手に褒められたりして、時には相手を叱ったり相手から叱られたりしながら、時が経つにつれ自分が成長できるのです。
たとえ今が周りの人から足を引っ張られたり叱られたりすることが続く時期であっても、自分が誰かを育てたり誰かを褒めたりしていれば、必ず自分にも同じことが跳ね返ってきます。
なぜなら、五行には陰と陽があって、それぞれが助け合ったり抑制したりしながらバランスをとっているからです。人間関係に悩んでいる方は陰陽五行説を勉強して、「周りの人に成長させてもらっている自分」を意識することで人間関係の悩みを軽減していきましょう(終)。 |