インカンテーション(Incantation)とは「呪文」のことです。私が子ども
のころに「ひみつのアッコちゃん」という漫画で、アッコちゃんが魔法の鏡に向かって「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、○○になれー」と呪文を唱えると、希望通りの姿に変身するというのに憧れた時期がありました。
同様に、インカンテーションは「自分はこうなりたい!」などの自分に力を与えるプラスの言葉を、これ以上ないという強い感情とボディランゲージを加えて言うことです。
「7つの習慣」を日本に送り出したジェームス・スキナー氏が「成功のステップ」の中に「成功させる魔法の言葉、それはインカンテーション」と書いています。スキナー氏は「言葉の影響力は想像以上のものがある」と言っています。あるフレーズを毎日繰り返し、感情をこめて自分自身に言い聞かせていれば、やがて無意識がそれを信じるようになり、行動に変化が起こるというのです。この何度も繰り返す言葉がインカンテーションと呼ばれているのです。「私はできる!」と毎日繰り返している人は何でもできる人になり、「私はできない!」と繰り返している人は何もできない人になってしまうというのです。
ここで、インカンテーションを裏付ける話を紹介します。私がある心理学の
講演で聞いた話ですが、合気道では言葉にどれほどの力があるかを示すための面白い実験があるといいます。まず、一人の人が自分の腕をまっすぐに体の前に伸ばします。すると、もう一人が両手を使いながらその腕を曲げようとします。もし二人とも同じぐらいの体格であれば、腕は簡単に曲がります。
当然、二本の腕は一本の腕よりも強いからです。今度は、最初の人は腕を伸ばすときに、強く「はい」という肯定的な言葉を発声します。このとき、もう一人がどんなに力いっぱい頑張っても、腕は曲がりません。今度は、腕を
伸ばす人は「いいえ」という否定的な言葉を言いながら腕を伸ばします。す
ると、腕はいとも簡単に曲がってしまうのです。このように、たった一言の言葉が私たちの肉体的な力を倍増させ、もしくはそれを半減させるほど大き
な力があります。言葉の影響力は大きいのです。
インカンテーションを続けることによって、私たちの仕事や生活がインカン
テーションで表現している内容に合うように無意識が仕向けてくれるように
なります。インカンテーションを常に繰り返していれば、実際その通りになるのです。そして、最も強力な力を持つインカンテーションは、「私は○○である」といった、自分の自己イメージを持つものです。例えば、健康になりたい場合は「私は健康である」などと繰り返します。
皆さんも自分や周りの人が習慣化している言葉をよく確認してみてください。
・ 日頃、自分が心の中で自分に言い聞かせているインカンテーションは?
・ 周りの人たちはどの様なインカンテーションを繰り返していますか?
・ 上司や組織のトップたちはどんなインカンテーションを言っていますか?
皆さんは常日頃、自分に「私はできる!」と言っているでしょうか、それとも「私はできない!」と言っているでしょうか。また、どんな言葉が皆さんの周りでは話されていますか。「そんなことできないよ」とか「知るか、私の責任じゃない」とかいうような言葉でしょうか。それとも「素晴らしい、是非やってみよう!」とか「あなたの問題を解決してあげよう!」でしょうか。「そんなことできないよ」などと否定的な言葉を組織内でみんなが一週間言い続ければ、言葉だけで組織を潰すことができます。また、逆に「素晴らしい、是非やってみよう!」などと肯定的な言葉を使うだけで、組織の業績や風土に根本的な改革ができるようになります。
インカンテーションを繰り返し脳にインプットすることで、その言葉は必ず実現します。脳は日ごろ使っている言葉や心の中で思っていることを信じ、
必ず実現させます。自分の仕事や生活に変化をもたらしたいと思うのであれ
ば、とりあえず1ヶ月の間、自分の会話から全ての否定的な言葉を追放し、
肯定的な言葉を使い続けることで何が起こるか試してみましょう(終)。
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