安全JAWSちゃんのハートLetter
過去の記事
ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
アリとキリギリス

イソップ物語の「アリとキリギリス」というおとぎ話はご存じですか。

夏の暑い盛りに、アリが汗水ながして餌を巣に運んでいるとき、近くの涼し い草むらでは、キリギリスが楽しく歌っていました。「アリさん、アリさん, どうしてそんなに働いているの。まだまだ冬はやって来ませんよ」とキリギリスが言うと、「やがて冬がくるんだよ。その時困らないためさ」とアリは言い、熱心に働き続けました。一方、キリギリスはすずしい夕方になるとバイオリンを弾き、毎晩舞踏会を楽しみ、暑い日中は昼寝ばかりしていました。
いつしか季節は寒い冬になりました。野の草は枯れ、キリギリスは食べるも のがなくなってしまい、餌を求めてアリの所へやってきました。「アリさん、 何か食べるものを分けてもらえませんか」とキリギリスが言うと、「それは、 お困りでしょう。どうぞお入り下さい」とアリは言い、キリギリスを暖かい部屋へ招き入れ、食事を与えてやりました。

アリとキリギリスの話は、人間は働かなければならないときはよく働くこと が大切であり、怠けていてはその報いを受けるという「勧善懲悪思想(良い ことをすすめ悪いことをこらしめる)」の戒めや「備えあれば憂いなし」という教訓を説いたおとぎ話です。また、私が子どものころの昭和の時代は、「子どものころに必死で勉強しておけば、後から苦労しないで済む」、「一流大学、一流会社へ行って、一流の生活を得るためには、子どものうちが勝負だ」、「将来のために、今を犠牲にするんだ」などの考えが主流で、当時の日本人はこのおとぎ話の教訓を心の支えにしてアリとなって働き、日本は高度成長をとげました。こつこつこつこつ働いて、経済大国を作りあげたのです。

アリの生き方は「定年までは闇雲(やみくも)に働き、老後はのんびりと子どもや孫に囲まれて、楽しい余生を送る」という、まさに昭和の日本のサラリーマン的な姿が重なって見えます。また、キリギリスの「歌いたいときに歌い、食べたいときに食べる。俺は俺の好きに生きるのだ」という姿勢は、当時の日本では「悪」とされたのです。

ところで、イソップ物語にある「アリとキリギリス」のお話は、日本では「親切なアリは、キリギリスに食べ物を与えてやりました」という、ハッピー・エンドなお話になっていますが、あるイソップ研究者の調査によりますと、欧米で発行されている148種類の本を調べたら、日本式のハッピー・エンドになっているのはスペインだけで、他はすべて「アリはキリギリスが飢えて死ぬのを待って、その死体を全部食べてしまいました」になっているといいます。欧米の社会では、幼い頃から人間社会の持つ「弱肉強食」という生存競争の厳しさを教えています。国境を接し、常に戦乱に明け暮れた歴史と風土がそうさせているのかもしれません。だから、アリとキリギリスでもこのような結末になっているのです。

最近は、このアリとキリギリスの2つの解釈以外にも、面白い説が2つ出て
きました。現代の日本版アリとキリギリスです。

【現代の日本版アリとキリギリス@】
暑い夏のあいだ、毎日アリが一生懸命働いているとき、キリギリスは歌って ばかりいて遊んでいました。冬になって、食べ物がなくなったキリギリスがアリの家を訪ねるところまでは同じです。ところが、いくら戸をたたいてもアリの返事がありません。家の中に入ってみると、アリは死んでいました。
働き過ぎ、いわゆる「過労死」だったのです。

【現代の日本版アリとキリギリスA】
食べ物に困ったキリギリスは、音楽会を開くことを考え、アリの家を訪ねて 音楽会のチケットを買ってもらい、その収入で冬を過ごすことができました。
夏の間、遊んでいたのではなく、しっかり音楽の勉強をして、キャリアを積 んでいたのです。

いかがですか、これらのアリとキリギリスの4つの解釈。それぞれに登場す るアリとキリギリスの人生を4つのタイプに分けてみました。
・ 定年まで懸命に働き年金生活を送る「昭和のサラリーマンタイプのアリ」
・ 自分の好きなように人生を送る「フリータータイプのキリギリス」
・ 働きすぎで身体を悪くしてしまう「ワーカホリックタイプのアリ」
・ 資格や技術の取得に力を入れる「キャリアアップタイプのキリギリス」

みなさんはどのタイプでしょうか。ちなみに、アリとキリギリスというおとぎ語は、つくられた当初は「アリとセミ」だったそうです。セミの成虫が冬まで長生きすることはないはずですけど・・・。そこがおとぎ話なのでしょう(終)。


このページを閉じる