発明王エジソンが小学生のとき、先生から「1+1は?」と聞かれて「1」と答えたという話があります。この時、エジソンは証拠として2つの粘土のかたまりを1つに合わせて先生に見せたといいます。2つのモノを1つにまとめることによって、モノの効率が上がったり、モノが使いやすくなったりするような発想が「1+1=1」という発想です。エジソンもこの発想によって多くのモノを発明していますが、この「1+1=1」という発想は、私たちのまわりを見渡すと意外にあちこちに見られます。
たとえば、食べ物では「○○丼」というのがそうです。「うな丼」はうなぎとご飯を1つの器にまとめたものですし、「牛丼」は牛肉とご飯が一緒になっています。これは、1つの皿やどんぶりで2つの食材が盛りつけられるという点で、料理をつくる側にとって効率的ですし、食べる方も時間が節約できるなどのメリットがあります。この他にも、イギリスの伯爵がトランプをしながら食事できないかと考えて、パンに具材を挟んで食べたことが起源だといわれている「サンドウィッチ」もうそうですし、中国ではなく日本がルーツである「天津飯」は来店客からの「早く食べられるものを」という要望に応えて、カニ玉をご飯の上にのせたのが発祥だといわれています。
また、文具のなかにも「1+1=1」のアイデアで過去にヒットした商品があります。1977年に発売されたゼブラの「シャーボ」はシャープペンシルとボールペンを合わせたものです。これも、2つのモノを1つにまとめることによって、消費者が使いやすくなったためにヒットした商品です。さらに、家電製品をみると、CDプレーヤーとラジオとカセットテープレコーダーを合わせた「CDラジカセ」、暖房機と冷房機と除湿機をあわせた「エアコン」など、3つのモノを1つにまとめた「1+1+1=1」という発想の商品も発売されています。
これらの商品はエジソンの「1+1=1」の発想で、複数のモノを1つにまとめることによって商品の効率を上げたり、使いやすくしたりすることによって私たちの生活を快適にしています。ただ、複数のモノを1つにまとめるという発想は、「商品開発段階」ではそんなに簡単なことではありません。
たとえば、CDラジカセはCDプレーヤーとラジオとカセットテープレコーダーのそれぞれの商品の機能を守りながら、効率的で使いやすいように商品の大きさを小さくしなければなりません。「3つのモノを1つにしたら大きさが3倍になって、価格も3倍になった」ではその商品は売れないでしょう。
このように、それぞれのモノの大きさやコストを調整しながら、1つにまとめていくことはとても大変なのです。
そして、この「1+1=1」という発想は「複数のモノのいいところを集めて、調整しながら1つにまとめていく」という点では、私たちの仕事においてもそれぞれ違った意見やアイデアを1つにまとめていくという「合意形成」の場でも重要です。たとえば、私たちの周りでは企業の統合・再編や市町村の合併などの「1+1」や「1+1+1」の状況が多くなっていますが、それぞれの組織のメンバーが納得して1つにならなければ、本来の目的である「組織の効率化」や「財政の安定化」が図れず、表面上は1つになっても、いつまでも答えは「2」や「3」のままになります。このように、「1+1=1」の発想で2つの意見や主張を調整して1つにまとめるためには、1つにまとめることによるメリットをきちんと説明し、納得性や公平性のある答えを出していかなければなりません。最後に、江戸時代に「1+1=1」の発想で合意形成をして、トラブルを解決した逸話をご紹介します。
九州の唐津には、一本の川をはさんで「京町」と「魚町」という2つの町がありました。ある時、この2つの町にかかる橋がつくられました。しかし、そこで問題が起こりました。橋の名前をどうするかについて、2つの町で意見が分かれたのです。京町では「京橋」にするべきだと主張し、魚町では「魚橋」にするべきと主張します。どちらも譲ろうとはしません。そこで「1+1=1」の発想でアイデアを出したのが町の代官でした。彼は、それなら「魚」と「京」という2つの字をくっつけて「鯨橋(くじらばし)」にすればいいと提案したのです。この名案に両者とも納得し、橋の名前は無事、「鯨橋」に決まったといいます。
私たちも、仕事や家庭や様々な場面でエジソンのような「1+1=1」の発想を持って、メンバーが良い意見やアイデアを出しながらお互いが認め合い、
前向きに合意形成を進めていきましょう(終)。
|