安全JAWSちゃんのハートLetter
過去の記事
ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
ジェロントロジー

私の母は実家で一人暮らしをしています。昭和14年生まれで、80歳を超 えています。体は元気で身の回りのことは一人でできるのですが、最近は日常生活での物忘れが多くなり、昨年自治体の窓口に相談して「要介護認定の審査」を受けました。結果は「要支援1」で、厚生労働省によると「家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態」とされています。そこで、今年1月に自治体の運営する「地域包括支援センター」に伺い、介護予防のための介護サービスを受け始めました。

こんなこともあり、自分自身「何か介護や高齢者のサポートに役立つ知識を 身につけたい」と思い、勉強し始めたのが「ジェロントロジー」です。ジェロントロジー(gerontology)は1903年、後にヨーグルトの乳酸菌の働きに注目してノーベル賞を受賞したロシアの学者メチニコフが創作した用語であり、ギリシャ語のgeronを語源とする「geront(o)」(老齢)に学問を意味する「logy」が合成されたものです。日本では「老年学」と訳されています。ジェロントロジーの社会への普及を進めている「一般社団法人日本応用老年学会」の設立趣意書には以下のように書かれています。

『ジェロントロジーは人間の加齢変化や社会に内在する問題を研究し、高齢 社会のあらゆる課題を解決するための新しい学問です。最近では、世代間問題の研究やその手立ても視野にいれています。アメリカの大学では、自立した高齢者の生きがいつくりや社会貢献に関する教育を行う大学院や学部のコースが普及しているそうです。加齢変化を退行するプロセスとしてではなく生涯発達として捉えようとするコンセプトがあらゆる学問領域に浸透しているのです。一方、わが国ではこれまで、医学・看護学・福祉学が老年学教育の中心となってきました。これが社会のさまざまな手立てや施策の確立に大きな遅れをもたらしています。高齢者市場の開拓やサービス・商品の開発にも老年学に関する知識不足からくる不十分さやゆがみが見られます。高齢者施設や地域の生涯学習プログラムの中にも高齢者に関する差別意識(エイジズム)が随所にみられます。これらの高齢社会に必須の諸活動を産・官・学にとどまらず、民間団体や一個人のレベルにまで広げてきたいと考えております。・・・(一部省略しています)』。

私はジェロントロジーを勉強したうえで、今年3月に一般社団法人日本応用 老年学会が主催する「ジェロントロジー検定試験」を受験し、検定試験に合 格しました。私がジェロントロジー検定試験の受験で勉強した「日本の高齢 社会の歴史と現状」について、みなさんにお伝えします。人類が初めて平均 寿命50歳の壁を破ったのは20世紀初めで、ニュージーランド、オーストラリア、ヨーロッパの先進国、アメリカ合衆国などが次々に平均寿命50歳を超えていきました。しかし、その当時まだ日本の平均寿命は30歳代後半 に低迷していました。第二次世界大戦後、米と食塩の摂取が減少し、乳類や肉類の摂取が増加するにつれ、日本人の平均寿命は驚異的に延伸し、
1980年にはついに世界一の長寿国になりました。

そして現在の日本では、以下のような高齢者の問題が顕在化しています。
・高齢者の6人に1人は一人暮らし(孤立によるうつ病や孤立死の問題) ・認知症と予備軍は高齢者の約4人に1人(徘徊や行方不明などの問題) ・高齢者の心身が衰えて介護に近づく「フレイル(虚弱)」の問題・病気や転倒にもつながる「低栄養(たんぱく質の不足)」の問題・飲み込む能力が衰えることによる誤嚥性肺炎など、口腔機能の問題・高齢者への虐待(身体的・心理的・性的・経済的・ネグレクト)の増加・オレオレ詐欺や還付金等詐欺などの「振り込め詐欺」の被害が増えている・高齢者の精神的依存度は家族が高く友人などが心の支えである人が少ない・現役世代からリタイヤしたあとの「地域デビュー(地域参加)」の問題・社会の高齢化や医療技術の進歩など治療費の高額化による医療費の増大。一方、日本では以下のように今後の高齢社会への分析や対策も進んでいます。
・日本の貯蓄額は60歳代で最も多く、金融資産の6割を60歳以上が保有
・2015年に60歳以上の高齢者世帯の消費支出は全体の約半分を占める・従来の自治会や町内会以外にNPOなどの地域コミュニティ活動が増加
・介護保険サービスの充実(「介護予防・日常生活支援総合事業」の新設)
・日本の高齢者の就業率は高く、70万人がシルバー人材センターに登録
・養成講座の実施による「認知症サポーター」の育成(現在で1000万人)
・判断能力が不十分な人には「成年後見制度」で法的に財産や権利を守る
・2025年に保健・医療・福祉の連携で「地域包括ケアシステム」を構築

今後は、一般社団法人日本応用老年学会が認定する「ジェロントロジー・マ
イスター」として、ジェロントロジー検定試験の受験で勉強して習得した知 識を活かして、高齢社会に生きる様々な人に有益な情報を提供し、高齢社会に貢献していきたいと思います。「ジェロントロジー検定試験」に興味のあ
る方はこちらをご覧ください(終)。
( https://sag-j.org/kentei/index.html )

このページを閉じる