今回は、私が尊敬している順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生をご紹介します。小林先生は日本の「自律神経」の第一人者です。小林先生の逸話として有名なのが、一般的に身体に悪いといわれている「背脂系の超こってりラーメン」が好きであることです。小林先生は言っています。自分が超こってりラーメンを食べ続けているのに病気にならないのは「食べたい」と思うのに、健康に気を遣って「我慢しよう」と欲求を抑えることで発生するストレ
スが自律神経のバランスを乱すことを自分で理解しているからだと。
自律神経とは、人間の意思とは関係なく24時間働き続けている神経で、私
たちが意識しなくても呼吸できているのは自律神経のおかげです。この他にも、体温や胃腸の働きをコントロールしてくれています。自律神経には、昼
間や活動しているときに活発になる「交感神経」と、夜間やリラックスしているときに活発になる「副交感神経」の2種類があります。車を運転するにはアクセルとブレーキが必要であるように、体にとってもアクセル役の交感神経とブレーキ役の副交感神経の両方が必要です。時速100キロ以上で何
時間も車で走り続けたら、いつかはガス欠になるでしょうし、事故を起こしたり警察に捕まることもあるでしょう。また、エンジンやタイヤがダメになったりしかねません。快適に走り続けるためにはアクセルだけでなく、適度なブレーキが欠かせないのです。同様に、「交感神経」と「副交感神経」は生活習慣や感情などの要因の中で、常にバランスを取り合っているのです。
そんな小林先生の著書「不摂生でも病気にならない人の習慣」(小学館新書)を読んで、これは新型コロナによるリモートワークの増加など、就業環境が急に変化した「新しい働き方による不摂生」にも使えると思い、この著書を参考にさせていただいたキティこうぞうお勧めの「(小林弘幸流)在宅勤務
で病気にならない人の7つの習慣」をご紹介します。
1.コップ1杯の水のあとに「朝食はトースト、バナナ、ヨーグルト」「在宅勤務になって、生活リズムが乱れた」という方で、「通勤が無くなって時間ができたはずなのに、始業時間ギリギリまで寝てしまう」、「今まではオフィスのそばにあるカフェで朝食をとっていたが、自宅で作るのが面倒だ」などの理由で朝食を抜いている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、朝食を抜くと自律神経のバランスが乱れて、その状態を引きずったまま一日を過ごすことになるそうです。コップ1杯の水は胃腸をオンモードにします。本当に時間が無ければ、バナナ1本で十分だそうです。
ちなみに私は和食派ですが、時間がない朝でも「みそ汁1杯だけ」は飲むよ
うにしています。
2.集中力が高まる「大切な朝の時間は一番大切な仕事」から始める
「在宅勤務になって、メールチェックの時間が増えた」という方で、「朝一番のメールの処理だけで大変」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、朝は神経伝達物質のドーパミンやアドレナリンが大量に分泌されるため、集中力が高まる「動のゴールデンタイム」だそうです。メールは自由なタイミングで返信できるコミュニケーション手段であるため、午後イチに回すのが得策だそうです。私もそうですが、午前中は優先順位の高い大切な仕事や緊急性の高い仕事から始めましょう。
3.「仕事は45分間の集中+15分の休憩」のワンセット
「在宅勤務になって、残業が増えた」という方で、「早く仕事を終わらせるために、できるだけ長時間集中して仕事をしよう」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、人間の集中力の持続時間は90分が限界で、30歳を過ぎると自律神経の働きが相対的に落ちてくるので、45分なら誰でも集中できるそうです。「休息は働き終えた後にとるもの」と思っていると、効果的な休息が取れた気にならないそうです。私も45分仕事をしたあと、15分ぐらいはテレビを見たり音楽を聴いたりして、休憩を入れています。
4.昼食後や午後の眠いときは「30分ほどの仮眠」をとる
「在宅勤務になって、午後から眠くなるようになった」という方で、「周りに職場の仲間がいないため、特に午後は仕事への集中が難しい」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、昼食で食べたものが胃の中で消化され始めると、ブレーキ役の副交感神経の作用で眠くなる
そうです。仮眠の有効性は科学的に証明されていて、NASA(アメリカ航空宇宙局)では26分の仮眠時間を採用しているそうです。先ほど「45分間の集中+15分の休憩」とお話ししましたが、30分の仮眠をとるのであれば、その前後のどちらかに90分の集中時間をつくってもいいでしょう。
5.仕事終わりに外に出て、「20〜30分のウォーキング」
「在宅勤務になって、身体を動かすことが減った」という方で、「でも、ランニングなどの激しい運動は苦手」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、デスクワークで長時間座っていると筋肉が硬直し、うっ血することで疲労感を高めるそうです。さらに、ウォーキングで外の空気を吸うことでのリラックス効果、首の痛みや肩こりの解消などの効果もあるそうです。
6.スマホやパソコンで「寝る直前にSNSを見ない」
「在宅勤務になって、スマホやパソコンを見る時間が増えた」という方で、
「仕事が終わっても、SNSやネット情報をつい見てしまう」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、人間の体は夕方から副交感神経が優位になり、睡眠の準備が始まりますが、寝る直前にスマホやパソコンでSNSやネット情報を見ると、脳が刺激されて交感神経が活性化してしまうそうです。また、眠れたとしても「眠りが浅い」、「夜中に何度も起きる」というトラブルが起きやすくなるそうです。さらに、SNS上での誹謗中傷の言葉が目に入るなど、他人の反応や動向が気になって自律神経が乱れることが多くなるそうです。
7.休みの日に「今日は一日ダラダラすることを目的にする」と考える
「在宅勤務になって、仕事とプライベートの時間の線引きが難しくなった」
という方で、「仕事がない休日も少し仕事をしながら家でダラダラ過ごして
しまう」と考えている方は、この習慣を身につけましょう。小林先生によると、休みの日にダラダラ過ごしたことを後悔して嫌な気分になると自律神経が乱れますが、「予定通りのダラダラした日」と考えれば達成感を感じることができ、その日の睡眠や翌日のコンディションを整えることができるそうです。ただ、休日も平日と同じ時間に起床して1日の基本ペースを守るなど、
自律神経のバランスを崩さないように注意することも重要とのことです。
以上が「(小林弘幸流)在宅勤務で病気にならない人の7つの習慣」です。
最後に、小林先生はこの著書に以下の通り書かれています。テレビや雑誌などで、いずれも医師などが勧めている「朝食を食べる、食べない」、「炭水
化物を抜く、抜かない」、どちらが健康にいいのかの答えは一つ、自分自身
がヘルス・リテラシー(健康や医療に関する情報を探したり、活用したりする能力)を磨き、自分にとって相応しいか相応しくないか、自分でジャッジ
できる判断力を身につけるしかありません。健康維持の秘訣は一つではなく、十人十色。試行錯誤しながら、自分が納得したものを行うのが正解ですと。
今回の私のコラムがみなさんの健康維持の一助になれば幸いです(終)。
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