「1/f ゆらぎ」とは大自然のリズムのことで、脳機能研究所の社長である武者利光さんが研究された理論です。ここでいう「ゆらぎ」とはゆれているということではありません。ある物理的な量や質が変化する時、その量や質が平均的には一定の間隔を示しているように見えますが、正確に測定するとわずかなズレが出ていることがあります。その変化は微妙で人為的なものではなく、完全に予測できないようなズレとなっています。この予測できないようなズレが「1/f ゆらぎ」であり、自然界をは
じめ様々な場で観測されています。
たとえば、星の瞬きは決してコンピューターで測ったように等間隔ではありません。打ち寄せる海の波にもズレがあります。小川のせせらぎ、そよぐ風、鳥の鳴き声な
ど、自然界の現象にはみな「1/f ゆらぎ」を見ることができます。そして、このゆらぎが人間に心地よさや安らぎや幸せを感じさせてくれるのです。
「1/f ゆらぎ」が人間に心地よさや安らぎを与えてくれるのは、人間の生体リズムも「1/f ゆらぎ」になっているからです。私たちの心臓の心拍間隔も一定ではなく、ゆらいでいます。体温の変化、呼吸数にもゆらぎがあります。さらに人間の行為や人間が作ったものもみなゆらぎを持っています。手拍子にはメトロノームに見られないゆらぎがありますし、話し言葉の中にもゆらぎがあります。音楽でいえば、モーツアルトの名曲や宇多田ヒカルさんや美空ひばりさんの歌声にも「1/f ゆらぎ」があると言われています。
人間の生体リズムは「1/f ゆらぎ」を感知するとそれが生体リズムと共鳴し、共振します。人間が本来持っているリズムと同調するものは心地よさを呼び、交感神経を刺激し、自律神経を調和します。調和の取れた自律神経は血液の循環をよくし、気分を爽快にして活力を育ててくれます。
「1/f ゆらぎ」を感じるためには自然の中に飛び込むことが一番いいのですが、普段の生活の中で感じるためには私たちの生活や私たちを取り囲む環境を「1/f ゆらぎ」に合わせるとよいと言われます。たとえばオフィスの中を見回してみてください。オフィスにあるのは、ゆらぎのない幾何学的なものばかりです。デスクが等間隔に並び、直線でできた窓やドア、空調により一定の温度が保たれています。現代は一定で幾何学的なものばかりがあふれています。これは、生産性や効率性を考えると確かによいのかもしれません。しかし、その中に取り囲まれた人たちはストレスを抱え、疲れを溜め込んで生活されている人も多いのではないでしょうか。
ストレスのない毎日を過ごすには、私たちが使っている持ち物や環境に少しずつ自然のものを取り入れていくとよいでしょう。たとえば、木の素材を取り入れることです。実は、木目も等間隔ではない「1/f ゆらぎ」の状態になっているのです。木の素材を活かした家具や持ち物に囲まれているだけで心が安らぐでしょう。その他にも、エアコンをやめて扇風機にする、夜の照明をろうそくにする、部屋に水墨画や浮世絵を飾ってみる、などがお勧めです。きっと「1/f ゆらぎ」がみなさんに癒しを与えてくれますよ。
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