今回は「健康とは長生きすることか?」を考えさせられるお話です。
ある旅行会社が次のようなお客様のニーズをつかんで、大ヒット商品を生み出しました。人生90年時代に入って長生きをする人が増えてきている中で、「健康のままで死期を迎えたい」、「病気になって人の世話になりたくない」、「ボケたくない」、「死ぬならぽっくり死にたい」と思う人が多くなってきています。そこで、その旅行会社は日本全国に数ヶ所あるぽっくり寺(奈良、
埼玉、東京、山形など)を巡って、お参りをしたあとに「ぽっくり死にますように」という願いと自分の名前を絵馬に書いて奉納するという「ぽっくりツアー」を売り出しました。
当初は、こんな名もないお寺だけを巡るツアーが売れるかどうか疑問視されていましたが、ふたを開けてびっくり。50歳〜70歳代の女性からの注文が殺到し、バスはいつも満員になりました。ここでみなさん少し考えてください。50歳〜70歳代の女性は同年代の男性に比べるとよっぽど元気ですし、とてもすぐに寝たきりになるとは思えません。どうしてこのツアーが50歳〜70歳代の女性のニーズと一致したのでしょう。
不思議に思ったこの旅行会社の社員がツアーに同行したそうです。すると、参加者の女性たちはバスの中ではさほど特別喜んでいる様子はなかったそうですが、ぽっくり寺に着くなり、我先にと絵馬を買い求めたそうです。そして、お寺で丁寧にお参りをしたあと、嬉しそうに絵馬に書いていました。
「ぽっくりと死にますように」そしてご主人の名前を・・・。男性の方は奥さんが「旅行に行く」と言ったら、必ず行き先を確認したほうがよさそうです。ちなみに、帰りのバスの中で心不全のため、ぽっくり逝った方も見えたそうです。
「人生90年時代」といわれますが、「生き方」より「老い方」や「死に方」を考える時期に来ているのかもしれません。これからは、高齢者医療の負担減というネガティブな考え方ではなく、お年寄りの経験や知識を活かした社会づくりに目を向けるような視点が必要ではないでしょうか。これまで家族や社会のために十分な貢献をしてきたお年寄りの方が「みんなに迷惑かけたくない」と願うツアーに人気が集まるのはどこかさびしい気がします。今回は、笑えるような笑えないお話でした。(終)
今回は「夢しか実現しない」のメッセージで今までに多くの起業家を育て、日本を元気にされている福島正伸さんの著書「メンタリング・マネジメント 〜共感と信頼の人材育成術〜」に載っている「ちょっといい話」をご紹介します。
|