今回は、私がストレスマネジメント研修で受講者にやっていただく「私はテスト
(Who am Tテスト)」をご紹介します。
「私は○○という人間である」という文章で○○にあたる言葉を3分間で20個書き出してください。たとえば、「私は血液型がA型という人間である」などです。
「ヨーイ、スタート!」で3分経ってからいくつ書けたかを確認します。
「私はテスト」は自分がアイデンティティーカード(IDカード)をいくつ持っているかを調べるテストです。アイデンティティーとは「自分が何者か」、つまり自己証明ができることを言い、このアイデンティティーをたくさん持っている人は自己がより多く出来上がっていることになります。
管理職研修では、受講者のうち約半数の人が10個以上書き出すことができますが、新入社員や若手社員の研修になると受講者の多くが5個書けないということが起こります。アイデンティティーは年齢を重ねたり、立場を築いたりすることによって確立してくるものですから当たり前といえば当たり前なのですが、最近の若い方は自分のアイデンティティーが確立していない方が多い傾向にあるようです。
アイデンティティーが確立していく過程は、まず「ままごと」からスタートします。「お父さんみたいになりたい」「お母さんみたいになりたい」を真似することから始まり、テレビの影響から「ヒーローになりたい」「魔法使いになりたい」となり、少し職業観が出てくると「学校の先生になりたい」「刑事になりたい」などと言い始め、その後は具体的に「イチローみたいになりたい」「澤穂希みたいなサッカー選手になりたい」と変化してきます。
「〜になりたい」「〜みたいになりたい」というのが積み重なってきた結果、大体18歳から22歳の就職する時期に「私はこんな人間です」というアイデンティティーが出来上がってくるのです。しかし、最近は生活環境の変化などにより、就職する時期になってもまだアイデンティティーが出来上がっていない人が多くなっているように感じます。原因としては、「フリーター」などの言葉に代表されるように学校を卒業しても正社員として企業に就職しない若者が増えていること、親が子供の就職に関して入社式まで同席するなど、親の過干渉(干渉のしすぎ)などが挙げられます。
「自分が何者か」が確立していなければ、「私はこんな人間です」と周りの人にうまく表現できないこととなり、結果としてコミュニケーションが不足し、周りの人との人間関係がうまく取れなくなってきます。また、「私はこんな人間です」と言えなければ「私はこうしたい」とか「私はこうありたい」という自己表現もできないことになり、仕事上も上司の指示や命令に対してうまく対応できないことが起こってくるでしょう。
若い方のコミュニケーション能力が低下しているといわれていますが、私はそれを
解消するために、まずはアイデンティティーの確立が必要ではないかと思っていま
す。若い方を教育する立場の方は、この「私はテスト」を使ってコミュニケーションのトレーニングをしてください。きっと教育される立場の若い方だけではなく、教えている自分自身のよりいっそうのアイデンティティーの確立、コミュニケーション能力の向上につながると思いますよ。(終) |