今年は夏から秋にかけてオリンピック、高校野球、パラリンピックと続き、暑かっ
たせいもあって家でスポーツ観戦をする機会が多かったですが、今回はそこで感じたことを書かせていただきます。
マラソンやサッカーは別にして、多くのスポーツ競技には「タイムをとる」、つまりタイムアウトというルールがあります。代表的な競技としては野球や卓球やバレーボールがありますが、タイムアウトをとると不思議と不利な状況が有利な状況に
変わったりすることが多いように感じます。どんなスポーツでも「流れ」というものがあって、タイムアウトには悪い流れを断ち切ったり、良い流れを呼び込んだりする効果もあるのかもしれません。ただ、それだけでは説明できない「何か」があるのではないかと私は思います。
たとえば、バレーボールの試合で相手チームが連続ポイントを取ったときにタイム
アウトをとると、その後自分のチームにポイントが入ることが増えたり、野球の試
合でピッチャーがフォアボールで打者に出塁を許したときにタイムアウトをとると、
その後ピッチャーの制球がよくなったりと、何か選手の心理に影響を与えることが
起こっているのではないでしょうか。
心理学用語に「ブレイク・ステート」という言葉があります。これは「ある悪い心理状態を中断して、一旦ニュートラルな心理状態に移動すること」を言います。いくら一流のスポーツ選手でも、プレー中に困った気持ちや憂うつな気持ちでこころが一杯になっている状態を明るい気持ちや前向きな気持ちに切り替えるということはなかなか難しいものです。しかし、「このままでは負けてしまう」や「またフォアボールを出したらどうしよう」という自分が感じているネガティブな気持ちを一度リセットすることで現状の悪い感情からは脱出することができます。悪い心理状態から脱出できれば、元々力のある選手であれば本来の力を発揮してベストのプレーで難局を乗り切っていくことができます。先ほどお話ししたタイムアウトの効果は、まさにこの「ブレイク・ステート」ではないでしょうか。
「人間の脳は一度に一つのことしか考えられない」と言われています。だからネガ
ティブな思考や感情を持ちながらポジティブな思考や感情を持つことは困難です。
でも、現在持っているネガティブな思考や感情を一度ストップしてから一息入れて、ポジティブな思考や感情に移行することは可能です。だから「気持ちを切り替えろ」というアドバイスよりも「一息入れたら」というアドバイスのほうが適切であるといえます。
仕事においても「ブレイク・ステート」は大切です。もしみなさんが一日の仕事の中で行き詰まったときは無理にポジティブな気持ちに切り替えようとせずに、自分のこころの中で「タイム!」と声をかけて深呼吸してみてはいかがでしょう。そうすれば自分の本来の力が発揮できて、いつもより仕事がはかどるかもしれませんよ。
一度お試しください(終)。 |