みなさんは職場の上司や仲間、またはプライベートで付き合っている友だちの中で「私はこの人から嫌われているのではないか」と思う人はいませんか。そんな人に対してコミュニケーションを拒否したり、できるだけ顔を合わせないようにしたりできればいいのですが、そんな訳にもいかず、仕方なくときどき機嫌をとったりお世辞を言ったりしていませんか。確かにそうすることで、その人との人間関係を壊さずに維持することはできるかもしれませんが、それが長いこと続けば、かなりのストレスを感じることになります。それでは、そのような場合には相手に対してどのような態度で接すればよいのでしょうか。ある政治家が嫌われている人に対して「頼みごと」をすることで、相手との人間関係を改善させることに成功した例がありますのでご紹介します。
その政治家の名前はベンジャミン・フランクリン。彼は「アメリカ合衆国建国の父」の一人としてアメリカの独立宣言や憲法制定に大きな影響を与えた人です。百ドル札の肖像画にもなっています。また、雨の中で凧を上げて「雷の正体が電気である」ことを証明したり、避雷針を発明した物理学者としても有名です。
フランクリンがペンシルベニア州の議員時代の頃、議会でいつも彼の答弁に反論してくる政敵がいました。ある日、フランクリンはその政敵に手紙を出しました。内容は「○○という本を持っていたら貸してほしい」というものでした。このような手紙を出して、二度ほど本を借りたところ、その政敵の態度は一転し、フランクリンに好意を寄せるようになり、議会での執拗な反論もなくなったそうです。それ以来、フランクリンとその政敵は生涯の政治的協力者になったといいます。
人間は基本的に「自分の行動が道理にかなっている」と思いたがります。そこで,
自分の信念に合わない行動をしたときや自分の信念が自分の行動と矛盾していると
感じたときには過去の自分の行動を振り返ったり、自分が今やっている行動を再評価したりして、自分の信念を行動に合わせようとします。つまり、フランクリンの政敵は「私はフランクリンのことが嫌いだ」という信念に基づいて、議会でフランクリンの答弁に反論ばかりしていたのですが、「嫌いなフランクリンに本を貸した」という行動をしてしまったことで信念と行動が矛盾し、「私が今まで本を貸したのは自分の好きな人だった」→「私が本を貸すのは自分の好きな人だけだ」→「本を貸したということは、私はフランクリンのことが好きなのだ」と、自分の信念を自分の行動に合わせる心理が働いたため、このようなことが起こったと考えられます。
このように、相手に頼みごとをすることにより、相手の自分に対するネガティブな信念や感情をポジティブに変える効果を心理学用語で「ベンジャミン・フランクリン効果」といいます。
みなさんの中にも「もしかしたら、私はこの人から嫌われているのではないか」と心配して、それが日々のストレスになっている人はいませんか。そんな人は、まずはその相手にちょっとしたお願い事をしてみることからコミュニケーションをスタートしてみてはいかがでしょうか。「ベンジャミン・フランクリン効果」に加えて、その相手に「私は人から頼りにされている」という優越感を与えることにより、きっと相手のあなたに対する好感度も高まり、今後の人間関係が良くなっていくと思いますよ(終)。
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