まだまだ寒い日が続いていますが、今年も少しずつ春の便りが聞かれるようにな
ってきました。各地の梅園では梅が少しずつ開花し、2月上旬ぐらいから見ごろを迎えるのではないでしょうか。3月になれば桜の便りもあちらこちらで聞こえてくるでしょう。今回はこの梅と桜についてお話ししたいと思います。
梅と桜はともにバラ科サクラ属の落葉広葉樹です。梅の花言葉は「澄んだ心」で
す。桜は種類によって花言葉が違い、日本の国花であるヤマザクラは「あなたに
微笑む」、ソメイヨシノは「優れた美人」、八重桜は「豊かな教養」などとなっています。また、梅と桜は諺(ことわざ)にも多く使われており「梅に鶯(うぐいす)」「三日見ぬ間の桜」「梅と桜を両手に持つ」などがあります。
みなさんは「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉を知っていますか。桜は枝を切ると花が咲かなくなるだけでなく枯れてしまう事があり、梅は反対に枝を切らないと良い実がつかないところからきているそうです。同じ種類でありながら、桜は切り口から腐りやすいので枝を切ることは避けますが、梅は枝を切ると切り口から小枝が密生し、枝振りがよくなり、よく伸びて花をつけ、実を結ぶのです。
つまり、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉の意味は、樹木にはそれぞれの特徴や性格があり、その特徴や性格に合わせて世話をしないとうまく育たないという戒めでもあります。
この言葉は人間にも当てはまります。学校教育や家庭教育でも、子どもに対して
桜のように自由に枝を伸ばしてあげることが必要な場合と、梅のように手をかけて育ててあげるのが必要な場合があります。これを取り違えてしまうと、社会にうまく適応できない人間が出来上がってしまうのです。子どもが好奇心を持って「これがやりたい」と言っているのに、親が「ダメ」と言って子どもの心を腐らせてしまったり、子どもがやってはいけないこと、やらせてはいけないことを放置して、子どもを間違った方向に導いている先生がいたりと、現代の人間社会にも「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」が通用すると思います。
ちなみに、梅の枝を切って樹木の形を整えてあげることを「剪定(せんてい)」といいます。剪定というのは単に枝を切るということではないそうです。一本一本の樹木はそれぞれ違う心を持っています。樹木の機嫌を損ねないよう、樹木の反発をなるべく小さく収めるよう、樹木の伸びたい気持ちを聞きながら、樹木の勢いをなだめながら、伸ばしたい方へ誘導していくそうです。剪定のプロによると「剪定とは、いかに枝を切るかではなく、いかに枝を切らないか」だそうです。
子どもの良いところは子どもの自由に任せてどんどん伸ばしてあげる。逆に、子どもの悪いところは「悪いから」といって切り捨てるのではなく、梅の剪定のように、子どもの「個性」として伸ばしてやることにより、将来の社会生活に役立たせるような教育が大切です。いずれにしても、親や学校の先生には「子どもは一人ひとり違う」ということを理解し、子ども一人ひとりを尊重し、いかに個性を伸ばしていくかという教育を心がけていただきたいと思います。
最後に、梅も桜も剪定するかどうかは別にして、毎日見てあげることが重要だといいます。農家の人によると、毎日見てやっていれば梅も桜もいい花を咲かせて長生きするということです。何よりも、子どもは必ず毎日見てあげることが大切ですよね(終)。
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