最近ネットの書き込みを見ていると、就活中の学生からの「企業の採用担当者は何で上から目線なのか」という言葉や企業の若手社員からの「上司や先輩が上から目線でアドバイスをしてくる」というつぶやきが目に留まります。そこで、今回はこの「上から目線」についてお話しします。
榎本博明氏の著書「上から目線の構造」(日本経済新聞出版社)に「上から目線」と口にする人がどんな目線で相手を見ているかについて次のような記載があります。
『相手が親切心からアドバイスをしてくれたのに「上から目線だ」と拒否的な
態度をとるのだから、当然のことながら相手に対する感謝の気持ちはなく、相手が親切で言ってくれたという解釈よりも、相手が優位にものを言ってくるという解釈に重きを置いている。アドバイスをしてくるという姿勢が自分に対する優位を誇示しているように感じられるので、自分がバカにされていると思い、ムカつく。そもそも相手の方が経験も知識もはるかに豊かで、自分にアドバイスできる立場にあるといった認識や経緯が欠けている。そこに見え隠れしているのは「見下され不安」である。見下されているのではないかといった不安が強いために、本来は役に立つアドバイスも自分に対して優位を誇示する材料と受け止めてしまうのだ。
世の中を勝ち負けの図式で見る傾向のある人は、人間関係も上下の図式で見ようとする。自分が勝っている、優位に立っていると思えればよいが、そうでないときは見下されているのではないかといった不安を強め、何とか優位に立っているかのように見せかけたいと思い、尊大な態度で自分の力を誇示しようとする。だが残念なことに、尊大な態度をとることによって自信のなさを露呈してしまう。もし本当に自信があれば、人の意見に素直に耳を傾ける心の余裕があるはずである。アドバイスを取り入れることで、仕事のやり方を改善することができるのだが、自信のない人は自分を変えることに抵抗があるため、「ここをこう変えた方がよい」と言われると自分を全否定されたかのように感情的な反応を示す。』
上記のような榎本氏の指摘はまさに的を射ていると思います。さらに、これは私の私感ですが、一部の親や先生が子どもに対して「お客様扱い」をしているのにも問題があると思います。本来であれば、人生経験や知識が豊富で子どもたちより上の立場であるはずの親や先生が子どもに対してレストランやデパートの店員のような「おもてなし対応」をすることにより、子どもが「本来あるべき適切な上下関係」を体験したり実感したりする機会を減らしているように見えます。また、小学校の徒競走で子どもたちに配慮して順位をつけさせないなど、子どものウィークポイントにフタをして明確にしないことにより、本来子どもが経験しなければならない落ち込みや気づき、そして自分が持っているストロングポイントやウィークポイントを個性として伸ばしていくような機会を奪ってしまっているのではないでしょうか。
「そういう時代だ」と一言で言ってしまえばその通りなのですが、企業の管理
職が若手の部下に適切な指導を行っていても「それはパワハラです」と言われてしまうような背景には、このような「上から目線」の心理があることを企業の管理職の方は知っておいた方がいいようです(終)。
|